あまり気乗りはしないが、昨日の続き。この話を続けても何ら建設的な解決案は見えてこないし、結局はタワーレコードはヤな会社という話につながってしまうだけなので、精神衛生上もあまりよろしくはない。だけどHMVからも公式な声明が出た以上、以前これを求めて問い合わせまでした立場上扱わないわけにもいかない。
HMVが発表した「お客様へのお知らせ」

いつもHMVをご利用いただきまして誠にありがとうございます。

さて、現在国会では著作権法の一部を改正する法律案が審議されており、これには「CDの還流防止措置」が含まれております。この「還流防止措置」は、廉価な邦楽CDの中国やその他アジア諸国からの還流を規制する事を目的としております。しかしながら弊社の考え方と致しましては、現在の法案ではまだその規制による洋楽輸入盤に対する影響がどの程度のものか明確でないと思っております。

お客さまに適正な価格の輸入CDを提供している会社として、弊社は昨年9月よりこの法案を提案している様々な関係団体・省庁に、消費者の正当な権利が失われないよう積極的に働きかけております。特に弊社のお客様には優遇的な価格にて幅広い品揃えの洋楽輸入盤を引続きご提供できるよう最善の努力をしてまいります。弊社の取引会社(レコード会社)からもこの法案は洋楽の輸入盤には行使しないとの確約を得ておりますので、弊社は引続きお客様の利益が不当に害される事のないよう念を押してまいります。

今後ともHMVをご利用頂きますようお願い致します。

昨日取り上げたタワーの声明と決定的に違うのは、今回の著作権改正法案が還流盤の規制に止まらない別の意図の存在を匂わせ、かつユーザーに対しては今後も「優遇的な価格にて」販売を続ける努力をすることを約束するものだということ。残念ながらタワーはその立場を明確にしていなかった。一ユーザーとしてどちらに好感を抱くかと言えば、間違いなくHMVの方である。
“輸入CD規制”――HMVは「反対」、タワレコは「賛成?」
上記IT mediaの記事では両者が正反対の意向を持っているような書き方までしている。最初にも書いたように、だからと言って「HMV偉い!、タワーはダメダメ」なんて単純な比較で話を終わらせても不毛なだけである。HMVにしても法案が可決成立すればそれに従わざるを得ないのだろうし、予想される最悪の事態が訪れればいくら「幅広い品揃えの洋楽輸入盤を引続きご提供できるよう最善の努力をしてまいります」とは言っても全く影響を受けないとは考えにくい。本当に法案に反対を表明するのであれば、その立場を明確にして行動に移すべきだが、昨日立ち寄ったHMVの某店ではそれに結びつくような証拠は目にすることができなかった。高橋健太郎さんのコラム(5月26日付け)では、HMVが昨年の段階で文化庁に意見書を提出していたことが明らかにされているが、今頃になってそれが明らかになったところで、3月末からのこの2ヶ月近く沈黙を続けていたことに対する言い訳になるだろうか。何故もっと早い段階で立場を表明しなかったのか。私が4月12日に送った問い合わせには何故まっとうな回答をよこさなかったのか。5月4日に行われたロフトプラスワンでのシンポジウムには何故出席しなかったのか。仮にこんな疑問を抱かせない行動をHMVが取っていれば、この問題はもっと違う展開を見せていただろうと思う。
タワーにしてもHMVにしても、世論が盛り上がってきたことでさすがに黙ってもいられなくなったために、この時期にようやく声明を出したと邪推されても仕方あるまい。衆議院での法案審議は明日から始まる。販売会社のこれら声明が審議に影響を及ぼすことがあれば良いのだが。