特に名は秘すが、今日チェーン展開をしていて、輸入盤も多く扱うとあるCDショップへ行った際、ふと思い立って店員に次のようなことを尋ねてみた。
私「来年から輸入盤が買えなくなるって話があるんですけど、実際どうなるんですか?」
店員「え?そんなことはないですよ」
私「でも今の国会に改正著作権法案が出されてますよね」
店員「え、ええ…」
私「あれが通過すると輸入盤が規制される可能性があるんですけど」
店員「それは…決まってみないとわからないですよ」
私「そうなんですか?」
店員「うちとしても決まってからでないとどうするかはわかりません」
突っ込みどころはいろいろあったのだが、これ以上追求しても無駄であろうと思い、ここで引き下がることにした。可決成立がほぼ確実な法案が通るかどうかわからないはずはないし、営業に直結する問題をどう対処するか、考えていないはずはない。本当に考えていないのだとしたら経営者は頭がショートしている。それよりも気になったのは、最初この店員は輸入盤規制の可能性自体を否定しようとした。しかし私が「改正著作権法」という言葉を出した時に、一瞬顔色が曇り、「決まってからでないとわからない」と言い直している点だ。他の店員に聞いたわけではないので、確証はないのだが、「何か聞かれたらとりあえずごまかせ。もし詳しく知っている客だったら知らないと言え」と指導されているのではないかという疑問を持った。私が尋ねた店員は、少なくともこの件について聞かれるのは初めてという様子ではなかった。マニュアルがあるのだろうと思えて仕方が無い。そのマニュアルが意図するところは???
輸入盤を扱う大手CDショップにとって、改正著作権法成立後、従来のように輸入盤が扱えなくなったとしてもそれが痛手になるとは思えない。他に輸入盤を扱う業者が存在するのなら、顧客がそこへ流れる危険性があるものの、一律入ってこなくなるのだから業者間での競争も起きないからだ。そもそも大手CDショップが輸入盤の仕入先としているのは、国内レコード会社の輸入卸しセクションからが大半であって、生産国が違うものの感覚的には国内盤の仕入れと大差が無い。違うのは仕切り価格ぐらいのものだろう。輸入盤が扱えなくても国内盤を扱えば問題は無く、むしろ単価が高く、利幅も大きく返品の保証もある国内盤を中心に扱えば、経営者の観点からはメリットが大きい。それに対して消費者の反発があるという想像力は欠けているのかもしれないけど。
今のところ輸入権創設に反対を表明しているのは消費者および消費者団体ばかりだ。流通の立場である大手CDショップから似たような声が上がっている話は聞いたことが無い。上記の私の説はそれだけでも裏付けられるのかもしれない。それを確かめるべく、HMVタワーレコードディスクユニオンレコファンの4社に同内容の質問を送ってみた。

拝啓

 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。

 突然のお願いでまことに失礼と存じますが、以下のアンケートにご回答いただきますようお願い申し上げます。
 今期国会にて提出されております改正著作権法案には輸入権の創設を認める条項が盛り込まれております。仮に法案がこのまま通れば、運用次第では国内盤が発売されている同タイトルの輸入盤は今後日本国内で流通しないよう規制をかけることが可能です。一消費者の立場として、国内盤より安価で内容が同じ輸入盤は購入満足度の高い商品であることから、国内での流通が規制されてしまうことは消費者利益が著しく損なわれることになり、法案成立には懸念を抱いております。
 このような事態に際し、輸入盤販売の大手である貴社の法案に対する見解、法案成立後の方針がどうあるのか、消費者は非常に関心を持って注目しておりますが、残念ながら現在のところ貴社および多くの輸入盤販売会社の対応は不透明なままです。つきましては以下の項目にご回答いただきますよう、何卒よろしく申し上げます。
 なお、ご回答内容は拙ホームページhttp://d.hatena.ne.jp/k_turner/にて公開させていただきますことをあらかじめご了承願います。
 お忙しい折、まことに不躾なお願いで恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
  
1.改正著作権法案には賛成ですか?反対ですか?その理由もお答え願います。

2.貴社と日本レコード協会の間で、本改正案に関して法案提出前に何らかの話し合い、意見交換はされましたか?

3.本法案が成立すれば、来年1月から施行されることになっています。施行後、貴社では輸入盤の取り扱いについて従来とどのように変わりますか?

あくまでも一ユーザーでしかない私にちゃんと返事をしてくれるかどうかはわからない。ただ、私はこの4社に対しては年間で少なくとも数万円、多い会社には20万円ほどの売り上げに貢献している。尋ねることぐらい問題はないはずだ。回答が来ればここで公表するのでお楽しみに。


7日の日記に書いた、首相宛の要望に対して官邸担当者から返信が来た。

小泉総理大臣あてにメールをお送りいただきありがとうございました。いただいたご意見等は、今後の政策立案や執務上の参考とさせていただきます。
 皆様から非常にたくさんのメールをいただいておりますが、内閣官房の職員がご意見等を整理し、総理大臣に報告します。あわせて文部科学省経済産業省へも送付します。
 今後とも、メールを送信される場合は官邸ホームページの「ご意見募集」からお願いします。

                   内閣官房  官邸メール担当

定型文の返信であって、要望内容には全く触れられていない。何故文部科学省経済産業省へも回るのかもよくわからない。しかし内容のチェックはされるようだ。塵も積もれば山となるというが、こういう要望が多数集まれば何らかの影響を及ぼさないとも限らないんじゃないの?