チョコパニックvol.2@スターパインズカフェ



ちょうど1年前の同じ日にもここで開かれたイベントの第2弾。今回の出演者は主催の朝日美穂に小林建樹、そしてHicksville。去年に引き続き高橋健太郎のDJも。
まずは朝日。去年見た時はphat(当時)の沼直也を含む混成バンドを従えてヴォーカリストに徹した演奏で、ものごっつうファンキーで腰を抜かしたのを覚えている。今年の朝日はピアノの前に座り、ベースとパーカッションを加えたトリオだった。この編成ではシンガーソングライターとしての資質が強調されるのが道理で、去年のファンク路線とはずい分印象が異なる。去年のチョコパニック以降はピアノの弾き語りでライヴを行っていたそうで、バンド形態で演奏するのは1年ぶりとのこと。それにしては落ち着いた演奏で引き出しの多さを感じさせるものだった。何曲か披露された新曲も良かったし、名曲「唇に」まで聴けたので個人的には満足。都会的なソウルフィーリングが伝わってた。ただ惜しむらくはヴォーカルの線の細さだなあ。小柄な上に痩せているせいか、声量不足は否めないところ。Hicksvilleの真城さんを見習えとは言わないが、もう少し体力と肺活量を付けてくれれば申し分ない。
続いて小林建樹。何となく名前に覚えがあったが見るのはもちろん初めて。しかしこれが思わぬ収穫であった。ピアノまたはギターを弾きながら朗々と歌い上げるシンガーソングライターで、透明な高音が冴える歌声は迫力充分。さらに魅力的だったのは楽曲のユニークさで、ローラ・ニーロジョニ・ミッチェルトム・ウェイツなどがちらつく瞬間はあるものの、よく咀嚼されているので全体像としては誰にも似ていないオリジナリティに溢れていたのは見事。おまけにピアノが上手いのでビックリした。こういう出会いがあるからライヴ通いは楽しい。ベースとパーカッションがバッキングを務め、この二人がまた上手いので呆気にとられてしまった。タンバリンってそうやって叩くのかーと感心しまくり。ブリブリのベースもいやはや大変なものでした。いや〜勉強になった。
トリがHicksvilleロッテンハッツから計算するともう10年以上のキャリアになるはず。この人たちも長いね。オールドタイミーなカントリーやヒルビリーをベースにしたオリジナル曲の数々は相変わらず明るく瑞々しい。日本のバンドでこれほど湿り気を感じさせない音楽をやっている人たちは貴重だ。フロントの3人のハモリはばっちり決まるし、中森、小暮のギターはツボを押さえた優雅で気品ある音だし、最高です。小暮の弾くスライドなんてたまらんです。最近は月に1回程度のライヴ以外は個人活動が中心になっているようで、バンドとして活発な動きが無いのは残念だ。ソニーとのレーベル契約はまだ残っているのかな。こういう人たちがちゃんと活動できる余地の無さは、即ち日本の音楽産業の貧しさを証明することにもなる。
最後は出演者全員がステージに上がってHicksvilleの「バイバイ・ブルース」をセッション。個性や志向性は異なっても良質の音楽を愛する面々での楽しげなセッションは、見ている方も心温まる瞬間であった。決して今のメインストリームを席巻する人たちではないけれども、各々のアイディアやオリジナリティを追及して音楽に取り組んでいる姿勢は最大限評価したい。と同時にミュージシャンっていいなと思った。