住所不定無職 presents「MAGIC IN A POP'N'PAUL SHOW 〜PHASE1〜」@下北沢THREE



 先週発売になった2ndフルヴォリューム・シングル「トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!!」の発売を記念したレコ発イベントの第1弾。何とも欲張りなことに、3ヶ月連続でレコ発を行ってしまうのだ。
 いきなり結論を言ってしまうが、いやもう、壮絶なライヴだった。私はこのバンドのライヴは多分20回近く見ているけれど、予想はいつも斜め上方向に裏切られる。この日もその例に漏れなかった。
 セットリストは別掲参照。レコ発なのに新譜の曲をなかなか演奏しないところが何とも焦らし上手。新譜には入らなかった新曲の「シャ!シャ!シャ!シャイン・ア・ライト!」を披露したりして、「まだか〜?」とそろそろしびれを切らし始めたところで「MASIC IN A POP!!!」を持ってくる演出が憎い。
 この曲はキーボードのリフが印象的なので、ライヴではキーボード・プレーヤーをゲストに入れるのかと思っていたが、3人だけでの演奏だった。音の厚みが足らない部分は脳内で補完できるほどには聴き込んでいたため、違和感は無し。ユリナとヨーコのヴォーカルの掛け合いだけでも相当高度なことをちゃんとやってのけていたし、CDで聴けるサウンドとは一味違うライヴ・ヴァージョンは、新鮮な感動を残した。
 ライヴでは必ず演奏する代表曲「I wanna be your BEATLES」を挟んで、再度新譜から演奏された「キスキス」も素晴らしかった。この曲も新譜の中ではライヴ演奏が難しいと思われた曲だが、けなげに演奏する3人の熱意が伝わる出来栄えだった。
 ところが、内容と演奏の出来のバランスが取れていたのはこの辺りまでだったのだ。その次の「テレフォンナンバーリンリンリン」はゾンビーズ子とユリナのパート・チェンジが行われるのだが、何故かゾンちゃんのギターがぎこちなく、転換もダラダラとした印象。それまでスムーズだった流れに淀みが感じられた。ここからパフォーマンスがガラガラっと崩れてしまったように見えた。
 続く「メガネスターの悲劇」はユリナのリード・ギターが見ものなのだが、あれっ?どうしてそんなに弾けてないのだーー。この間はちゃんと弾けてたのに。この不可解さが住所のライヴのスリルでもあるのだが。
 それ以降はパンクとしか形容できない荒々しい演奏で最後まで押し切った住所の皆さんだった。アンコールでの「ロックンロール・マルチまがい商法」はユリナがダブルネックベース、ヨーコがゾンちゃんのグレッチを弾くという余興的趣向もあったりしたが、もちろん演奏はパンクであった。「いつも同じ楽器だと飽きるんだもん」とはユリナのMCでの弁。ユリナはよく「何か決める時に考えないようにしている」と言っている。これも単に同じ楽器を弾くことに飽きたという以上の理由は無いのだろう。実際に弾けるかどうかは別問題で、やりたかったからやったという姿勢が、演奏内容と同じくパンクなのだ。
 住所不定無職は演奏能力以上の楽曲を作ってしまうところがその特徴でもあって、ライヴはそんなことをする人たちを実際に見たいがために行っているところがある。だから演奏の出来不出来はそれほど大きな問題ではない。ただ2月に同じ会場で見た初ワンマンは演奏内容の面でも本当に素晴らしい出来だったので、この日のライヴにも期待するところはあった。それが叶わなかったのは事実だけれども、別に手を抜いていたとは思わないし、新曲を演奏することに気を取られるあまり、演奏し慣れている曲への集中力を欠いたぐらいのことではないかな。そこがこのバンドの面白いところでもある。
 終演後、物販コーナーで販促に励むユリナとヨーコと少し話す機会があったのだが、「CDは本当に自分たちで演奏しているんです。信じてください」と涙ながらに訴えられてしまった。別にトラを使っているのではないかなんて言っていないのに(笑)。このライヴの演奏の出来がいまいちだったことは本人たちも気にしているのね。大丈夫、私も鬼ではないのだから、ライヴの良かった面だけを記憶に留めるようにしよう。
 個人的事情から、住所のライヴはこれで当分見納め。次はいつ見られるか、今は全く分からないのだが、時間が空く分、色々な変化に期待しよう。まあそれも裏切られるのかな。

住所不定無職セットリスト@下北沢THREE 2011年11月20日
1.マジカルナイトロックンロールショー
2.ラナラナラナ
3.シャ!シャ!シャ!シャイン・ア・ライト
4.1・2・3
5.MASIC IN A POP!!!
6.I wanna be your BEATLES
7.キスキス
8.テレフォンナンバーリンリンリン
9.メガネスターの悲劇
10.ドゥーワッパ!
11.あの娘のaiko
12.渚のセプテンバーラブ
13.あいつはファニーボーイ
〜encore〜
14.ロックンロール・マルチまがい商法
15.世界で一番素敵なガール