"712 DAY PARTY Tour 2011" SHONEN KNIFE×住所不定無職@新代田FEVER

k_turner2011-07-17



 「ナイフの日」に因んだ恒例の少年ナイフの日本ツアー最終日。今年はゲストに住所不定無職を迎えて行われた。

 オープニング・アクトとして登場したのは、少年ナイフによる変名バンド、大阪ラモーンズ。間もなく発売される同名のカヴァー・アルバムを引っ提げて、このツアーがお披露目となった。
 ステージに現れたメンバーは向かって左手がギターのなおこさん、右手がベースのりつこさんになっていることに気づく。通常の少年ナイフの立ち位置とは逆で、センターにジョーイこそいないものの、これはラモーンズと同じ配置。トリビュートするからにはここまでやらないと。
 演奏は「Blitzkrieg Bop」からスタート。変にアレンジを加えることなく、しかしどこか飄々とした少年ナイフらしさを滲ませるカヴァー。世にラモーンズのカヴァーは星の数ほどあれど、本家へのリスペクトが感じられる正統派のカヴァーであることに嬉しくなる。加えて「Beat on the Brat」「Sheena is a Punk Rocker」「Rock 'n' Roll High School」「KKK Took My Baby Away」など超有名曲のオンパレードなので、観客の反応もすこぶる良い。当然私もシンガロングしまくりですよ。
 ラモーンズの前に「好きか、嫌いか」という設問は成立しえない。あり得るとしたら「あなたはラモーンか、そうでないか」だけだ。遺伝子に「R・A・M・O・N・E・S」の配列を持って生まれてしまった者ならば、この演奏が楽しめないはずはないのだ。じっっっつに楽しかった!GABBA GABBA HEY!

 続くはゲスト・アクトの住所。大阪公演も住所がゲストで出演したという。バンドをやっている女子にとって少年ナイフは憧れであり希望であることは想像に難くないわけで、対バンに抜擢された喜びが素直に伝わるような演奏だった。
 張り切り過ぎたのか、前半はテンポがやや走り気味で危なっかしさがあったものの、「I wanna be your BEATLES」あたりから落ち着きを取り戻し、住所の真骨頂とも言えるエクスプロージョンぶりが発揮されていた。どんな場所であろうとふてぶてしくも我流で押し切る態度が痛快!
 このバンドはほぼ月1回のペースでライヴを見ているのだが、ライヴでこれだけのカタルシスを味わせてくれたのは2月のワンマンの時以来と言わざるを得ないだろう。それ以降に見たライヴも残念とまではいかないものの、「この程度ではないでしょ?」と言いたい部分があった。久しぶりに溜飲が下がった思い。
 セットリストは別掲の通り。「渚のセプテンバーラブ」はチープ・トリックの「Surrender」を引用した新アレンジ。「メガネスターの悲劇」のユリナのギター・ソロも上達していた。上達と言えばユリナは遂にひとりでチューニングできるようになったのだね。腕を上げたな。最後の「オケレケレぺプー」でのゾンビーズ子のドラムの叩きっぷりがぶっ壊れていたのも可笑しかったな。

 住所不定無職セットリスト@新代田FEVER 2011/7/17
1.マジカルナイトロックンロールショー
2.ラナラナラナ
3.1.2.3!
4.世界で一番ステキなGIRL
5.I wanna be your BEATLES
6.恋のテレフォンナンバー!リンリンリンッ!
7.あ・い・つ・はファニーボーイ
8.あの娘のaiko
9.渚のセプテンバーラブ
10.メガネスターの悲劇
11.オケレケレぺプー


 そしてメインの少年ナイフ。私は『PRETTY LITTLE BAKA GUY』や『712』の頃の少年ナイフは好きだったが、90年代半ばに演奏が端正になって音も厚く洗練されてきたあたりから徐々に興味が薄れてしまった。それが世界にマーケットが広がった結果必要なことだと分かっていても。アルバムが出てもチェックしなくなって随分経つし、最後にライヴを見たのも多分10年ぐらい前だ。
 従ってライヴ前には楽しめるかどうか不安はあったのだが、結果から言えば全く問題なかった。もちろんこの日ステージに現れたのは昔の少年ナイフではなかった。骨太とすら言っていいほどのパワフルなロック・バンドの少年ナイフだった。幾度かのメンバー・チェンジ、海外を含め度重なるツアーを経験したからこそ出せる音は確信に満ちており、ロックンロールに理解があれば何人たりとも魅了されるようなサウンドだった。
 近作からのナンバーが中心だったようで、知らない曲ばかりではあったものの、そんなことは一切気にならなかった。むしろ最近の曲の質の高さに驚きの連続。一方で「カッパエキス」なんて懐かしいところを挟んでくれたりもしたので、往時の姿が見え隠れしたのも嬉しかった。
 基本的にはパンク路線のポップでシンプルな曲を中心に披露。しかし本編最後の2曲はヘヴィなハード・ロック・ナンバーで、この辺りはなおこさんの個人的な志向に忠実だったのか。演奏がしっかりしていたことに加え、偶然私個人もハード・ロック・モードに入っていたので楽しめた。
 アンコールでは予告されていた通りオリジナル・メンバーのあつこさんが加わり、スペシャルなセッション。ここでも懐かしの「アイ・アム・ア・キャット」や「トップ・オブ・ザ・ワールド」が聴けた。欲を言えば「ロケットに乗って」もやって欲しかったな。
 少年ナイフは今年で結成30周年だそうで、ということは芸歴はストーンズと19年しか違わないことになる。一度も解散することなくこれだけ活動を続けたバンドは日本では珍しい。しかもラモーンズの影響下にあることを堂々と公言できるピュアなロックンロール・バンドとしてだ。その誇り高き存在感は十分に伝わるライヴだった。少なくとも私はここ何年かのアルバムを聴いていなかったことを大いに反省した。