Kill!Kill!Steez!!vol.07@新宿Red Cloth


  • YGK


 サイケで浮遊感あるリフを重ねたファンク・ロック・バンド。ちょっとニューウェーヴの香りもあって、グルーヴに冷ややかさが感じられる。例えるならギャング・オブ・フォーがスライの曲をやっているような。初見ながらこの日の収穫のひとつ。
 後で調べたところベースとドラムはVolume Out!の人だった。ギターの人もどこかで見たなあと記憶の糸を手繰り寄せてみたら、LEGSでベースを弾いていた方だったことを思い出した。それぞれ別のバンドでは異なる音楽をやっているものの、片手間な印象は無かった。素晴らしいバンドだと思う。

  • BuGRADS


 最初にステージに上がったのがモヒカンのドラマー。次にベースとギターのバンドやってます風情の女子。その3名がセッティングしているところへ、ヴォーカリストである至って普通のお嬢さんが出てきた。ちぐはぐな風貌の4人から出てきた音がハード・コアなパンク・ナンバーだったのでのけぞる。
 しかしドラムとベースが確かなリズムをキープしており、見た目ほどの違和感は無かった。ユニークなバンドだ。

  • 乱闘祭

 2バンドが終わったところで場内アナウンスにより、観客が2方向へ分けられる。一方はフロア最後方へ、もう一方はステージの上へ。大きく空けられたフロア中央で繰り広げられたのが、プロレスリング・マッチ。

 ライヴハウスでプロレスという支離滅裂さ(笑)。プロレスって全く明るくないし、こんなに間近で見たこともないのだけれど、エンターテイメントに徹したサービス精神と至近距離だからこそ伝わる迫力によって、思わず見入ってしまった。

 私はステージの上から観戦。フラッシュを焚いて撮影するとプロレスっぽいなあと思ってシャッターを切った結果が上の3枚。私のプロレスのイメージは子どもの頃見た「タイガーマスク」で止まっている。

  • テクマ!


 このイベントのバラエティ感に止めを刺したのが、このテクマ!。打ち込みのトラックをバックに一人で歌い、踊る、魅惑のエンターテイナー。「YMOデヴィッド・ボウイ美輪明宏をリスペクトする」そうで、確かにそのいずれもの要素が盛り込まれていた。

 歌詞も歌い方もナルシスティックで、パントマイム風でありながらどこか間の抜けたダンスによって、耽美と自虐を行き来する訳の分からなさと気持ち悪さが最高だ。音楽活動は90年代前半から始まっているそうで、芸暦は長い。

  • THE CHOCOLATES


 助っ人としてDIESEL ANNのタエコがギターを弾くCHOCOLATES。この編成では2月に同じ紅布で見て以来となる。その時も以前のCHOCOLATESとは違う印象だったが、この日は更にパワー・アップしていた。


 ギターが代わることによってサウンド面での変化が起きたのは当然。具体的に言えば重く太いタエコのギターで、バンド・サウンドに奥行きが出来た。加えてタエコ以外のメンバーも、よりアグレッシヴな演奏にシフトしていることに気付かされる。


 特にヴォーカルのトクthe Dは圧巻。従来の彼は「キモイ!」「バカじゃねーの!」といった愛の込められた声援を浴びることが多く、それを楽しんでいる風でもあったのだが、この日の彼は骨太のロック・バンドのフロントに立つヴォーカリスト様であることを見せ付けるパフォーマンスだった。この迫力の前に嘲笑は皆無だ。


 以前のCHOCOLATESはトクちゃんの悪ふざけに負けじと、他のメンバーもバカの限りを尽くすようなバンドで、渾然一体となった時のカオスは壮絶なものがあったが、時に暴走するだけでグダグダな演奏になってしまう場面も何度か目撃している。クレイジーさはキープしつつ、より引き締まった音を叩き出す現在のCHOCOLATESは無敵という他無い。やはりこれはタエコが入ったことによる効果なのだろう。


 当初タエコは次のギタリストが決まるまで、2〜3回のライヴで弾く予定であったが、気が付けばもう3ヶ月以上その座に付いている。DIESEL ANNも今年1月にベーシストが脱退してから活動は止まっており、現在のところ活動を再開する予定は無いそうだ。タエコ自身、最近は弾き語りによる気ままなライヴを楽しんでいるようで、その時期ではないのだろう。またタエコ本人によると、それと平行してCHOCOLATESでギターを弾く楽しさに開眼したとも言っている。彼女がCHOCOLATESに正式に加入するかどうかは分からないが、今これだけのライヴが実現している以上、ファンとしてはもう少しこの編成が続くことを願うばかりだ。