キングブラザーズワンマンライブ!!西宮バイオレンスブルースが炸裂するパーフェクト皆殺し集会 2008@代官山UNIT



 お誘いを受けたので、ひっさびさにキングちゃんたちのライヴへ。結成10周年記念を兼ねたイベントである。記憶する限り、私が最後に彼らのライヴを見たのが2001年のはずだから、実に7年ぶり。しかも会場が以前の勤務先の近くだったので、否応無く懐かしい気持ちになった。
 まずオープニングのゲストであらかじめ決められた恋人たちへが登場。あら恋のライヴは初めてで、今最もライヴが見たいバンドのひとつだったので得した気分。
 打ち込みと人力演奏を組み合わせたジャム色の強いダブで、緊張と緩和を繰り返しながら高みに導く演奏は期待を裏切らないものだった。音源で聴けるほど叙情的ではなく、アグレッシヴな部分が強かったのも好印象。ただこういうタイプの音楽が、30分ほどで終わってしまったのは欲求不満が残る。もう少し長い演奏を見てみたい。できれば野外で。
 しばしのDJタイムを挟んでキングブラザーズがステージに現れる。この7年ほどの間に何度かメンバー・チェンジが行われ、今ではベースを加えた4人編成だ。
 7年もご無沙汰していれば、当然変化は感じられる。編成が変わったことで音に厚みが生まれ、一本調子で押すだけのスタイルからの脱却も見られた。ミドル・テンポのブルース・ナンバーが増えていた印象。さすがに10年もバンドを続けていれば、いくらかは音楽的になるのだろう。それを実現させたのが今のドラマーかも。ケイゾウ、マーヤのオリジナル・メンバーが、彼を信頼している様子が伺えるほどの腕の良さだった。
 後はケイゾウもマーヤも三十路を迎え、人間的に丸くなったのかなと。曲間に「ありがとう」と感謝する場面が多数。昔は客に悪態しか吐いていなかったのに。
 変わってねぇなあと思ったのは、まずケイゾウ、マーヤの風貌。凶暴で緊張感のある雰囲気が失われていなかったのは、驚くと同時に嬉しかった。あのチンピラ風情が消えてしまったらキングじゃないよなあ。そしてマーヤの過剰なパフォーマンスも相変わらずだった。ダイブの回数、滞空時間は減ったものの、あの1万円のギターでノイズを鳴らしながら暴れ回る様に、ホッとさせられた。暴力衝動は持続させようと思って持続できるものではない。わざとらしいダイブは見ていて痛々しいが、マーヤのそれは正しく狂っていた。
 動員は超満員とは言えず(ハコのサイズを考えれば無理もないが)、スペースにやや余裕があったこともあり、ライヴは沸点に達し切る手前の状態で続いていた。が、後半その空気が一変した。メンバー全員がフロアの真ん中に降りてきて、ドラムセットも移動させて演奏を続行。全ての照明が点けられた中で、爆音を響かせた。帰宅してから調べたら、この演出は最近では恒例になっているのね。ワッツーシゾンビの専売特許かと思っていたが、キングもやっていたとは。しかし同じ目線で、手を伸ばせば届く位置で演奏するのだから、当然観客は大喜び。このフロア演奏では、割りと初期の曲が多かったと記憶する。久しぶりに「ルル」とか「スパイボーイズ」とか聴けて、俄然盛り上がってしまった。
 フロアにセッティングしたまま、アンコールに2度も応えて、大盛況のうちにライヴ終了。長丁場のワンマンを、きっちり落とし前着けてくれたと思う。観客は私がキングのライヴに通っていた頃は小中学生だったのではないかと思しき若者が中心だった。ファンの新陳代謝が起きているのは健全だ。途中活動休止期間もあったとはいえ、私がご無沙汰していた間もキングはクレイジーなノイズを撒き散らしてきたからこその結果だろう。残念ながら10年近く前に一緒に汗だくになっていた皆さんはあまり来ていなかったようだ。マーヤがMCで「10年前から来とったヤツ、おるか〜!?」と聞いたら、手を上げたのは10人足らずで、「少ないやんけ!」とマーヤは苦笑していた。しかし今のキングも頑張っている。懐かしさと嬉しさが同居した、実に良いライヴだった。


 キングの10周年記念で懐かしの写真を。2000年3月5日、横浜のF.A.Dにて。この頃は写ルンですを使ってたんだよなあ。圧死されそうになりながらシャッターを切っていたのを思い出す。このアングルで撮れていることから、私のポジションもお分かりかと。