ロマーンズのワンマン@新宿Red Cloth



 ロマーンズが初のワンマンのライヴをやると聞いた時、期待より先に不安がよぎった。大丈夫かなと。何しろアルバムはまだ2枚しか発売しておらず、全曲の演奏時間を合わせても1時間に満たない。ライヴではテンポが速くなるので、実際の演奏時間はさらに短いだろう。しかも会場は紅布…。
 ロマーンズに関して私は親心に近い感情を抱いているので、はたして娘たちは晴れ舞台をちゃんと務めることができるのだろうかとハラハラしながら会場へ向かったのだった。
 開演時間にはほぼ満員の観客で溢れかえり、一安心。私が安心するのも変な話だが、安心したというのが正直な心情だった。紅布おなじみのシャッターがガラガラと上がって、オープニングはいつもの「ROMANES」から。

 この暑いのにメンバーはライダースを着込み、1曲目からノイジーに爆音を鳴らし、力いっぱいシャウト。よく考えたらロマーンズは1月に見て以来だから、相当久しぶり。セカンド・アルバムの発売後は初めてのライヴだった。
 2年前に初めて見た時の「何だこりゃ!?」的な驚きは既に無い。あの頃に比べれば演奏はしっかりしているし、観客に対峙するパフォーマーとしての能力も向上している。客を客とも思わない鉄面皮な風情が魅力でもあったのだが、その姿は既に過去のものだ。
 ナツコ・ロマーンは全力を振り絞って表現しようとしている様がよく分かる。ミカ・ロマーンが繰り返すジャンプ、そしてシャウトはミュージシャンらしさの現れであり、パフォーマンスの出来不出来と直結した潔いものだ。後方でドラムを叩くC.C.・ロマーンはそんな2人を見守るように、時折笑顔をこぼしながら舵取り役に徹している。演奏技術の点ではC.C.さんが最も成長したかもしれない。
 三者三様の個性が際立って見えるようになり、渾然一体となった集合体がロマーンズというバンドであることが明確になってきた。「ラモーンズの日本語カヴァーバンド」なる肩書きは、ロマーンズを説明するために避けられないものではあるだろうが、今やロマーンズはロマーンズという立派なバンドになっていた。
 ライヴは2部構成で、1部がファースト・アルバム中心、2部がセカンド中心のセット。間に15分ほどの休憩が入り、その間はステージにシャッターを下ろしたままでメンバーの声だけのトーク・コーナーがあった。このライヴの数日前にオフィシャルのBBSで急遽募集された「ロマーンズへの質問」に対して3人がそれぞれ答えるもの。姿を現さなかったのはステージではMCをしないというルールがあるからだそうだ。内容は割と他愛も無いものばかり(「好きな男性のタイプ」とか)で、メンバーの答えもとりとめのないものだった。そもそもトークが上手い人たちではないのは明らかで、司会を立てた方が良かったのではないかな。因みに「ロマーンズへの質問」の募集を知った私は、もし全然集まらなかったらどうしようと思い、10問ほどを考えて送っておいたのだが、いずれも採用されなかった。「あたいのウナギは中国産」というペンネームまで用意していたのに…。親心を踏みにじるなよ(笑)。全てを取り上げられないほど沢山の質問が届いたのだと解釈しておこう。
 観客の質の高さも特筆すべきだろう。紅布が満員になるほどの盛況だったのは前述の通り。しかも彼らは曲を熟知した熱心なファンだった。セカンドのタイトル曲であり、ロマーンズ初のオリジナル曲である「It's My Turn」の人気が特に高かったのは嬉しかった。わざとらしいモッシュやダイブも起こらず、自由に楽しんでいる印象が強かったのも良かった。良いバンドには良い客が付くのだ。
 久しぶりに見たライヴだったこともあり、新曲が増えていることに驚かされた。特に第2部は初めて聴く曲が5〜6曲ほどあり、その内ミカさんがリード・ヴォーカルを取る曲が3曲ほどあった。後で聞いたらこの日のために1ヶ月位前から急いで作ったのだそう。足元のモニタースピーカーに歌詞を書いたカンペを貼っていたほどだったので、本当に急ごしらえの曲だったようだ。
 普段30〜40分程度のライヴしかやっていないロマーンズにとって、2部構成とはいえ1時間半もあるワンマンライヴは果てしないものだっただろう。2部が終わった時点で演奏できる曲は全て演奏してしまい、アンコールを求められると「もう何でもいいよね」と言って「電撃バップ」をもう一度演奏。それが終わっても帰ろうとしない観客からリクエストを募り、2度目のアンコールは「It's My Turn」。ここで「It's My Turn」を要求する声が一番多かったのは、ロマーンズがどう見られているかを物語る。まさしく今のロマーンズの全てを出し切ったライヴだった。初ワンマンは大成功だろう。私も一ファンとして満足できた。



 ライヴ終了後、オフィシャルのBBSに書き込まれたC.C.・ロマーンのコメントが泣かせる。

出来ました!!お客さん来るのか、最後まで体力持つのか等、分からないまま当日を迎えたのですが結果ワンマン無事出来ました。
皆様本当にありがとうございました。みんな優しすぎます。あったけーっす。猛暑でもそれは嬉しすぎます。溶けてなくなってもいい。
ロマーンズ始めた時、温かい気持ちで見て下さいとお願いしたのを思い出しました。ここまで とは言ってないっす。

 何だか私まで誇らしい気持ちだ。何も私が誇ることではないのだが。