NATURALBORN ROCKERS 006@新宿Red Cloth

k_turner2007-03-03


 昨年暮れに見て以来のロマーンズ。これでこのバンドのライヴを見るのは4回目だ。驚いたことに、前回から2ヶ月ちょっとしか経っていないのに、上手くなっているのだ。月に5〜6回はライヴを続けているとはいえ、こんな短期間で上達の跡が見られるとは。若いって凄いなあ。当然、初めて見た時と比較すると、見違えるようだ。バンドを始めて2年半ぐらいだから、今はまだ伸び盛りなのかもしれない。

 テクニックが向上したと言っても、本質部分が変わったわけではないのが、このバンドの偉いところである。3コードのロックンロールを全面的に肯定する姿勢に、一点の曇りなし。それ以外何が必要?と言いたげなふてぶてしい態度が素晴らしい。中盤でナツコ・ロマーンのギターのストラップが切れてしまうアクシデントがあり、見ていて可哀相だったが、ミカ、C.C.が平然と演奏を続けたので、最後までグルーヴが失われることはなかった。案外逞しいではないか。

 先月発売された7インチに収録されていた「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス」が聴けたのが収穫。しかしこの曲はあっという間に終わるな。最後に演奏した「ママズ・ボーイ」も初めて聴いた。「ママズ・ボーイ」はサビの「♪マ・マ・マ・マ・マ・マ・ママズ・ボ〜イ!」の部分以外がスキャットになっていたので、終演後に歌詞は付けていないのか尋ねたところ、「一応作ったけれど、出来が良くないのでまだ披露できない」のだそう。その状態でライヴで演奏してしまうのがロマーンズらしい。

 ライヴが終わってから楽屋でロマーンズのインタビューが掲載されたbeatleg誌を3人に渡す。RAMONESのグラビアの次のページに掲載されていたことが、殊の外気に入っていただけたようだった(笑)。

  • the Mighty Moguls

 メンバーがステージに現れるまで知らなかったが、この日のムガルズは4人編成だった。オリジナル・ギタリストのチャッキーさんがキーボードで復帰したのである。衣装もいつもの原始人ルックから、オーバーオールへと変わっていた。どうやらこの編成でのライヴは今回限りのようだ。

 音の方は単純に音が厚くなったことに加え、躍動感が増した印象。ミッフィーさんがベースよりヴォーカルに比重を置いたせいだろうか、アンサンブルに対する無責任さが良い方向に現れたように思えた。マーライオンが水を吐いている様子が思い出されるくらいに、止め処もなく歌いまくる姿が最高。元々ピュア・ガレージの中でも、狂暴さや凶悪さよりも、マヌケさ、バカバカしさを強調した曲を得意としていたバンドだけに、知能指数の低さを感じさせる展開(注:褒めてます)は正しい。トリオ編成の時は一番目立つネモト・ド・ショボーレが、むしろ影が薄く感じられたほどであった。

 今まで何度か見た彼らのライヴでは、この日がベスト。ずっとこの編成でやればいいのに。

 ムガルズが演奏している時点で、会場はほぼ満員。クレイジーな演奏で、観客のウォーミングアップも充分だったが、このバンドが登場すると、熱気と密度がさらに一段階アップした。人気あるんだなあ。毛皮のマリーズを見るのは、半年振り2回目。昨年夏に見た時は、それほど固定ファンはいなかった記憶があるのに、この日は明らかに彼らを目当てに来ている観客が大勢いた。

 音の方はストゥージズやニューヨーク・ドールズの影響が感じられる、原始的なパンク・ロック。半年前に見た時と印象はほとんど変わらなかったが、支持を集める理由はいくつも思い当たる。まず曲がキャッチーだし、ヴォーカル志磨の攻撃的かつ挑発的なパフォーマンスは大変スリリングだ。メンバーの風貌も、シルエットクイズでバンドマンと分かるほどに反社会的である。実にロックバンドらしいロックバンドなのだ。

 ただひとつ特筆すべきことは、スタイルとしては古くからあるものなのに、彼らは全く古臭く感じられないのだ。古来からの形式をなぞっているだけではなく、今現在の感覚でも十分に狂っているからそう感じるのだろう。例えば村八分を今聴いてもカッコイイと思えるのと同じ理由だと思う。勢いはあるし、もっと大きくブレイクしても不思議ではないバンドだ。

  • NYLON

 早くも今年2度目の東京でのライヴになるNYLON。もう何度も何度も見ているバンドだが、彼らが東京へ出てくるとなれば仕事を休んででも駆けつけないわけにはいかない。

 毛皮のマリーズが残していった熱気がまだ残っている中でスタートした演奏は、その余勢を駆ってさらにエスカレートするというよりも、いかに自分たちの土俵に戻すかに精力を注いでいるように見えた。NYLONは良し悪しは別として、孤高の佇まいがあるバンドだ。そのパフォーマンスの激しさは、このページでは繰り返し述べていることであり、ロックンロール・バンドとして最大限の賛辞を送るべき代物であることは、四半世紀以上ロックを聴いてきた私の耳が保証する。だからある意味では異端でもあるのだ。

 この日のセットリストはやや古めの曲が多く、今となっては懐かしい「波乗りビート」でスタートし、序盤は2年ぐらい前のライヴを見ているようだった。3月28日に発売を控えたサード・アルバム、及びそれにも入らない新曲を意図的にセットリストから外していたのは、レコ発ライヴの日程が別に決まっているためで、敢えてスペシャル・メニューを組んだものと思われる。最近ではあまり演奏していない曲が多かった(何と「気にしちゃいないぜ」まで聴けた!)せいで、緊張せざるを得ない状況だったことも影響しているだろうが、オープニングからしばらくは、いつも以上にピリピリした演奏だった。特にステージにおける牽引役であるシマノが、苛立っているようにも見え、いつもの奔放な暴れっぷりをセーブしている気がした。

 その理由は本人に聞いてみないと分からないところだが、やはり私は毛皮のマリーズの後での演奏であったことが少なからず関係あるように思う。いつものNYLONならば、それこそ気にしちゃいないぜとばかりに、最初からNYLON流のやり方で、ハコの空気を変えてしまうが、この日は満員の観客に少なからず毛皮のマリーズを目当てで来ている人が含まれていたこと、またその期待に充分応えるライヴが直前まで行なわれていたことが、影を落としていたのではないだろうか。

 これと同じような光景は前にも見たことがあったなあと、思い巡らして気が付いた。昨年2月にClub Linerで開かれたイベントがまさにそれだ。コア系のパンク・バンドばかり出演するイベントで、NYLONは明らかに浮いた存在だったが、普段とは違うアウェイの状況を跳ね除ける、目の覚めるようなライヴだった。

 久しぶりの紅布で、トリの重責を担ったNYLONは、あの時ほどスムーズには行かなかったが、しかしきっちりと片は付けてくれた。4〜5曲目ぐらいで1弦を切ってしまったシマノは、それでふっ切れたのか、中盤からはフロアにバンバン突っ込んで来た。私が写真を撮っていることぐらい気付いていると思うが、それでも何度か神輿を担がされたほどだ。

加えて、この日は中盤以降のメグの弾け方にも目を見張るものが。いつものスクリーミングがメグの制御できる範囲を越えてしまったようで、聴いたことのない絶叫に驚かされた。

 やっぱりNYLONはスゴイ!と、白痴のような感想でまとめたい。スゴイのは十二分に分かっているだけに、なぜNYLONがこの程度の評価に甘んじているのかが不思議でならない。初めてこのバンドを見た時、「このバンドは遠くない将来に武道館でライヴをやっているだろう」と私は思った。あれからもう3年近く経つのですが…。私の夢想はいつになったら現実となるのだろう。


【3/8写真追加】
Red Clothの逆光の強さには泣かされる(ノД`)・゚・。