談志落語 with あんにゃもんにゃ@新宿シアターアプル

k_turner2006-03-14



 レイモンド・ダグラス・デイヴィス先生の教えを守り、ハードに生きているので今はちょっと詳細を書いている余裕がない。
 一言だけ言うならば、家元の落語に興味がある奴ぁ、その機会があるうちに1回でも多く見ておけということだ。

  • 3/18追記

 出演は順にザ・ギース(コント)、松元ヒロ(コント)、ポカスカジャン(冗談音楽)、中入り後林家二楽(紙切り)、トリが立川談志
 落語以外の演芸と家元のセッション企画だったようだ。それも若手(と言ってもザ・ギース以外は30歳以上だが)ばかりを揃えた意図は推して知るべし。今の落語が単なる古典芸能の範疇を出ていないことを誰よりも嘆いている家元らしい企画だと思う。ただ家元とそれ以外の出演者とでは芸歴を始めあらゆる面で段違いであるから、若手にはどうしても家元への遠慮が感じられたのだが。まあ、これは仕方のないところか。
 家元の演目は「黄金餅」。高座に上がるなり、「調子が良くなくて…」と体調に関する愚痴から始まるのはいつも通りだったが、この日は時事ネタにまつわるボヤキやブラックなジョークは一切無く、早々に噺に入ったのが意外だった。
 「黄金餅」は家元の十八番でもあって、私も何度か聞いている。それだけに出来不出来の差が如実に分かってしまう。どうやら本当に体調が良くないようで、金兵衛が長屋の住人に棺桶を担がせ、寺へ向かう際の道程を説明する行、ここはほとんどラップに近い流れるような語りが魅力なのだが、ここで何度か躓いていたし、さらに非常に珍しいことに上下を間違えたところもあった。家元ともあろう噺家が…と思うようなミスである。
 一席終えてから、恒例の解説と言い訳コーナーでは「老いを晒すことにも意味がある」「俺が本当に素晴らしいと思う芸は俺の弟子が受け継いでいる」と自らの老醜を自覚し、次の世代に期待するような弱気な発言も。これほどの噺家ならば、それもドキュメントとして価値を見出すことができるのだが、例えば高座でしばしば寝てしまったという晩年の志ん生や、舞台袖から高座まで歩けなくて弟子に運んでもらっていた彦六のような、最早芸を見せるというよりは生きていることを見せるようなことまで家元がするだろうか。その性格上、芸人としてのプライドが許さないのではないだろうか。そう考えると家元が高座に上がらなくなる日はそう遠いことではないような気がする。残念ではあるが。