Rockin Daddy@高円寺UFO CLUB



 出演は順にハッチハッチェルビアオールスターズ、SOUL CLAP、NYLON、夜のストレンジャーズ、THE PRIVATES。

  • ハッチハッチェルビアオールスターズ


 デキシのハチマさん率いる世界音楽漫遊トリオ。アイリッシュ・コウヘイとタケリコのアコギ2名と、ハチマさんのフィドルもしくはバンジョーというユニークな編成。音楽的にはヨーロピアンの雰囲気を漂わせつつ、ロシアに首を突っ込んでみたり、ハワイへ遠征したり、かと思えば昭和歌謡から映画音楽までピックアップする広大な音楽性を持つ。と言葉で説明してもよく分からないだろうから、Tot-Channelを見た方が手っ取り早いだろう。

 今日のステージもTot-Channelで見られる演奏と同様、諧謔精神に溢れた優雅で独自の世界を展開。「白鳥の湖」と「男はつらいよ」を合体させたり、「恋のバカンス」と「Bei Mir Bist Du Shon」を合体させたりと、やりたい放題だ。編成もユニークだが、こんなふざけた音楽をやっている人たちは世界的にも珍しいと思う。ハチマさんは過去にも多くのサイドプロジェクトを手掛けてきたが、どれも全力で遊んでいるところが素晴らしい。

  • SOUL CLAP


 初めて見たバンド。ギター×2、ベース、キーボード、ドラムの5人組。オーソドックスなロックバンドの編成で、実にオーソドックスで、ファンキーでブルージーなロックンロールを演奏。そのグルーヴ感は全くの予備知識の無い者でも一瞬にして圧倒させるだけのものがあった。パブ・ロック的柔軟性と演奏力のあるミュージシャンの集団で、ステージ上で適当に打ち合わせしながらリフを弾き出し、各メンバーはそれに合わせて曲を始めるということの繰り返しだった。それでいてごっつうグルーヴィーでカッコイイのだ。スカやR&Bも涼しい顔で演奏してしまうのだから恐れ入る。音楽的には多少異なるが、EGGS OVER EASYのライヴってこんな風だったのではないかと思った。

  • NYLON


 そして私が今日本で一番愛しているバンド、NYLONである。東京ではこれが今年最初のライヴ。この日記では今までも散々褒めちぎってきたが、やっぱりNYLONはいつ見ても最高である。本日のセットはさながらNYLONグレイテスト・ヒッツの様相で、「ジェットロケンロー」「オー・ベイビー!」などライヴの定番曲を総ざらい。昨年のカヴァー・アルバムからも「In The Street Today」と「Palisades Park」が聴けた。

 決して広いとは言えないUFO CLUBのステージを目いっぱい使い(NYLONの時だけマイクスタンドがステージ下に置かれたのは笑った)、フロントの3人は縦横無尽に駆け抜け、飛び跳ね、絶叫する。無秩序に暴れているようで、実は計算されたフォーメーションで動く様には毎回惚れ惚れさせられる。あれだけ動き回りながらシマノのギターはリズムが狂うことなくカッティングされているし、シホのベースもブンブンと唸るのである。

 締めは当然のように「Ride On R&R」。何度見てもこの瞬間のカオスは凄まじい。これだけのライヴをやるバンドがそれほど多くの観衆に見守られていないのは、文化的にも損失だと思うのだ。悪い事は言わないから、未経験の人は一度ぶっ飛ばされに来るべきだ。次回の東京でのライヴは2月12日(日)、新宿Marbleにて。対バンは夜のストレンジャーズ、片山ブレイカーズ&ザ・ロケンローパーティー、Lucky And The Radicals(ラジカルズにジッパーズのラッキーが合流したユニット)と豪華。さあ、これで見に行かないなどとは言わせないぞ。


 The Hardest Working Men in Kunitachi、夜ストである。ライヴを見るのは去年の5月以来か。無骨なブギー・ナンバーを中心に、今夜もちょっとセンチメンタルでほろ苦いミウラのギターと歌声がライヴハウスに鳴り響く。去年発売された『Still Crazy』というアルバムは密かに愛聴したものだ。演奏を聴きながら、どうして年間ベストアルバムに選ばなかったのかと後悔した。

 このバンドも既に独自のカラーを確立しており、ギブソンの音が嵌まり過ぎるほど嵌まったサウンドは、ロッキン・ブルースを愛でる者には堪らない。比較的テンポの速いナンバーを畳み掛けるように続けるあたりはただの飲んだくれには出来ない芸当だ。ソウルフルな新曲も素晴らしかったな。いつも思うのだが、彼らは労働者の生活に根ざした視点から歌を作っており、それ故リアルだ。ありもしない絵空事は絶対に歌わない、ある意味ストイックな世界観を持っている。その世界観が受け入れられるかどうかが、夜ストを魅力的に感じるかどうかの分かれ目だろう。私はもちろん肯定派。適度に必死で、適度に冷めている姿勢が実にいとおしい。

  • THE PRIVATES


 トリは大ベテラン、プライベーツ。初めて見たのはもう15〜6年ほど前だ。ちょうどバンドブーム華やかなりし頃だった。ただしこの15年で彼らを見るのは、これで3回目。この間音楽性にも様々な変遷があったと思われるが(詳しい事は知らない)、現在のプライベーツはコテコテと呼んで差し支えないほどに、ストーンズ・タイプのギター・ロック・バンドと化していた。いや、ストーンズ・タイプと言うより、もろストーンズ。ヴォーカル延原の動きはミック・ジャガーそのままだし、何より「Walking the Dog」など60年代のストーンズが好んで取り上げたR&Bナンバーを彼らも臆面無く演奏するのである。80年代末のバンドブーム時代に人気を集めたバンドの多くがそうであったように、彼らもロックをベースにしながらポップな曲を演奏していたと記憶するが、随分とシンプルで渋好みの方向へとシフトしたものだ。周囲に惑わされる事なく、やりたいことをストレートにやることで、バンドが生き長らえたのかもしれない。

 ロックンロールが好きであれば、こうしたバンドの音を嫌うはずなどなく、「あのプライベーツ」という色眼鏡を外すことで、演奏は楽しめた。「ストーンズが来日するから」という理由で、よりによって「Satisfaction」を、しかもオリジナル通りに演奏したほどで、これにケチを付ける方が野暮というものだ。3月に出るストーンズのトリビュート盤にも収録されているそうだが、やはりこのままのアレンジなのだろう。この直球ぶりは潔い。

 もちろん彼らのオリジナル曲も何曲かあり、今日プロモーション・ビデオを撮影してきたという新曲は、古典的ロックンロールを踏襲した、これまた直球のスピード・ナンバーで大変かっこよかった。プライベーツはもともとあまり器用な人たちではないのだろう。ロックンロールへの無垢な帰依を前面に打ち出したのは正解だと思った。


 5バンドともそれぞれに楽しめ、充実したイベントだった。これだけ楽しめてドリンク代込み2500円なのだから、日本は良い国だな〜。全ての演奏が終った時には11時ぐらい。Totちゃんと鶴原さんと青梅街道沿いのファミレスでメシを食ってたら、終電を逃してしまう。いい年をして前後のことをよく考えずに行動していることを、また証明してしまった。嗚呼、夜ストの「Still Crazy」が聴こえる…。
ということでこれは始発までの時間を潰すべく入った高円寺のマンガ喫茶で書いたもの。写真も撮ってあるので、現像が出来次第アップします。


【1/16追記】
 現像が出来たので、写真を追加。ある程度予想はしていたが、写真の仕上がりを見てUFO CLUBの半端ではない暗さにショックを受けた。どのバンドも基本的にドラムを撮ることは最初から断念しており、フロントに立つ人のみ狙って撮ったものの、それでも暗いな〜。ここは照明の光量が少ない上に、赤と黄色のライトしかないので、どうしても輪郭がぼやけた感じになってしまう。カメラマンにとっては鬼門のようなハコだ。