Hard Candy vol.5@新宿Motion



 出演は順にザ・50回転ズ、THE OUTS、ザ・ラジカルズ、そしてNYLON!!

  • 50回転ズ

 大阪発の恍けたガレージトリオ。mixiの彼らのコミュで知ったのだが、何とアメリカでのレコーディングとライヴを終えて、帰国した足での東京2デイズの2日目であったようだ。

 ドクター・フィールグッドの「Riot In Cell Block#9」に乗せて登場。これだけで憎めない奴らである。基本はガレージタイプのロックンロールで、インスト曲もあり、ちょっとGSも入っていたりと、音楽的にはオーソドックス。3人とも髪型がジョニー・ラモーンだけあって、ラモーンズ賛歌まであって、「分かった、皆まで言うな」と個人的なツボを突かれまくり。
 パフォーマーとしての才には目を見張るものがあり、狂気とボケが炸裂する芸人魂を見た。ともすると見落としがちだが、アンサンブルが的確で演奏も上手い。これぞ生粋のライヴバンド。やはり大阪からは良いバンドが出てくるなあ。

  • THE OUTS

 一転してこちらは硬派のピュア・ガレージ。ライヴを見るのは2年ぶりぐらいか。この間にベーシストが交代している。

 毒づくヴォーカルとドライヴ感たっぷりのファズギターは、Evil Hoodoo時代から一貫した彼らのスタイル。凶暴なサウンドで目を覚ましたゾンビ達によって暗黒世界へと誘われる。ヴォーカルTAKUYAは相変わらずカリスマ的なロックンローラーであって、この人を見る度に即座に思い出すのが60年代のミック・ジャガーである。ステージでのアクションなどは意識的にしろ無意識的にしろコピーしてしまっているのだろうが、単なるワンフーが真似したところでギャグにしかならないところを、この人を見てると目の前にミックがいるのではないかという錯覚に陥るから凄い。
 前半こそほとんどステージから飛び出していたTAKUYA以外は淡々としたものだったが、後半に進むにつれて演奏がカオスを形成し、OUTSの真骨頂を見ることができた。最高。

  • ザ・ラジカルズ


 私はこのバンドを密かに「浅草のJ.Geils Band」と呼んでいた(参照)。R&B色の強いロックンロール・バンドで、アンプリファイドのブルース・ハープもフィーチャーしていることがその理由で、この日の出演者の中では最もパブ・ロック的佇まいを持つバンドでもある。その認識が覆されたわけではないが、今日の演奏を見て「あ、ザ・フーも入ってる」と気付いた。それはヴォーカル江戸川力也がロジャー・ダルトリーのようにマイクを振り回したり、「Long Live Rock」の替え歌があったり、ドラムはキース・ムーンばりにパワフルだったりという直接的な要素に加え、モッズ時代のフーを思わせるR&B志向が感じられたからだ。

 9月に出たニュー・アルバムからの曲を中心にしたセットで、くどくない程度にファンキーでありつつ、日本語詞を違和感なく乗せることに成功していた。決してどファンク、どR&Bにはならず、あくまでもロックンロールである点が彼らの個性だ。こういうバンドは何時でもOKよ。

  • NYLON

 そしてNYLON。企画としてはゲストだけれども、この日はレコ発ツアーの一環ということでこの面子でトリを飾る重責を果たした。内容もスペシャルであって、まずはいつも通りのセットを30分ほど。

 今の彼らがいかに充実しているか、このライヴを見て分からないようであればロックンロールを理解しているとは言えない。激しくクレイジーなアクションはいつも通りで、ステージ上を右へ左へ飛び回り、シールドはこんがらがるわ、マイクスタンドは倒しまくるわ、の狼藉三昧。それでもビートは失われていないし、強烈なグルーヴが伝わってくる。ベースのシホ、ドラムのマサオの成長は著しく、裏方役のこの2人がNYLONを粗暴なイロモノ的に見られるのを防いでいる。もちろんギター、シマノの驚異的なリズム感によるカッティング、ヴォーカル、メグの巻き舌シャウトが無ければナイロン・ロールは成立しないのだが。

 それにしても彼らの激しすぎる動きは撮影者泣かせである。専属写真家(笑)としてもう何度もライヴを撮っているのに、未だに現場ではフレームに入らない!、ピントが合わない!とテンパリながらシャッターを切る私である。
 演奏曲の半分ぐらいはファースト、セカンドに入っていない新曲であったのは嬉しい。特に真ん中あたりで演奏された、初めて聴く曲が良かった。珍しくシホのカウントで始まったので、もしかしてシホが書いた曲なのかな。来年には出る予定のオリジナルの新作が今から待ち遠しい。

 ほぼフルセットの第1部が終わった後、新作『Cover Song Series Vol.1』でドラムを担当したトモコ・パピーにドラムがチェンジ。この日だけのスペシャル・セットで新作からの7曲を全曲演奏!これを見逃したファンは大いに悔しがって欲しい。
 パピーズは活動休止中なので、トモコさんのドラムを聴くのは本当に久しぶり。マサオも優れたドラマーだけれどこの人はまたタイプが違って、派手なシンコペーションを得意とした華麗なスティックさばきを見せてくれる。全7曲とは言っても、アルバムでも15分程度。ライヴだとさらにテンポが上がるので、それより短かっただろう。あっという間だっただけに、より貴重な第2部だった。ええもん見せてもろたわ。

 因みに今のツアーではマサオのドラムで新作からの曲をやっているそうなので、東京以外ではマサオ・ヴァージョンで聴けることになる。贅沢を言えばこっちも見たかったが、こればかりは遠征しない限り無理か。


 当然のことながら会場では新作を始め、各種CDやレコード、Tシャツの物販もあった。まあ私は全部持ってるわけだが。その中で見慣れないCDが1枚置いてあったので、メンバーに聞いてみるとアメリカはミネアポリスNIce & Neat Recordsというレーベルからリリースされた『Secret Recipe From The Far East』という日本のバンド6組によるコンピレーションとのこと。

 このアルバムにNYLONが「あいつに首ったけ」「ジェットロケンロー」(それぞれファースト、セカンドで既発)の2曲で参加。全く知らなかったので、慌てて1枚購入した。発売されたのは最近だが、曲提供の依頼があったのは少し前のことで、新曲を送る話もあったのだが結局有りモノで間に合わせたそう。これとは直接関係ないようだが、何とNYLONは去年アメリカ・ツアーの誘いもあったのだとか。丁度前任のドラムが脱退する時期に当たってしまい、話は流れたそうだが、タイミングさえ合えば実現していたはずだと思うと、残念。NYLONなら世界中どこへ行っても歓迎されると私は確信している。むしろ海外の方がウケは良いのではないかとすら思っている。来年あたり、ニューアルバムを引っさげて海外ツアーなんてどうですかねえ。何なら私がロードマネージャーをやるし。