立川談志と若手精鋭落語家の会@調布グリーンホール


 技術的には若手でも屈指の噺家と言われ、次世代の名人の呼び声も高い。確かに上手いなあと思う瞬間は随時。しかし下手でも笑えるタイプと上手いが面白くないタイプに分けるとしたら、どう考えても後者に属するのがどうも。他の噺も聞いてみたい。

 談志門下故、本人も「ホームグラウンドみたいなものですから、のびのびとできます」と言っていた通り。今まで聞いた談春の高座ではベスト。宿屋のおかみの演じ方が、談志の「二人旅」のばあさんとそっくりなのは血統がそうさせるのだろう。芸はこうして受け継がれていくのだなあ。

 まくらは先日末広亭での正蔵襲名披露公演で聞いたのと同じだった。でもテンポよく、時事性もあり、何度聞いても面白い。それは噺に入ってからも同様で、芝居狂の若旦那に語らせる台詞が、現代の歌舞伎界のトピックをなぞっている部分が多数あり可笑しい。台詞まわしも達者で、大笑いした後に繰り返された稽古の成果を感じた。

 談志はホームランか三振しかないとはよく言われるが、この日は三振に入るだろう。ただし見応えのある三振。噺の内容以前に、噺家としてのドキュメンタリーを期待して来ている客が多数おり、その期待には間違いなく答えていた。非常に珍しい演目で、他では聞いたことがない。本人曰く「ほとんどアドリブ」だそうで、下げも無く終わる不思議な噺。それでも1時間近い高座を澱みなく進めるのだから、やっぱり凄い。完成度はともかく、貴重な体験ができただけで客は満足してしまうのだ。