連載企画『FUJI ROCK の作り方』



 e+内の特設ページにて、フジロック関係者へのインタビューを掲載する連載が始まっている。同様の企画は公式ファンサイト(ORG)でも行われているし、e+が企画するからにはPR色が強くなるのは仕方のない部分ではあるが、丁寧に作られていて読み応えはある。
 第一弾として掲載されているのが、フジを支えるバックヤードとして地元苗場の関係者3名のインタビュー。あ、この人は毎年屋台で見かけるおじさんだと思ったら、ただのおじさんではなくて苗場観光協会の会長さんだった。フジが単なる夏の野外音楽興行ではなく、文字通り「フェスティバル」として開催されている裏側には、この会長さんをはじめ地元の多大なる協力があってこそであることがこれを読むと分かる。本来観光客の少ない夏場に大勢の人がやって来るのだから、当然経済効果を期待して協力している部分もあるのだろうけど、少なくともそれが最大の目的ではなく、フェスを盛り立て、成功させることが第一義になっているようだ。
 はるばる苗場まで来ても目当てのアーティストを見たらさっさと帰っちゃうような人もいて、金を払って来ているのだしその人はそうしたくてそうしているのだろうから、それは自由だし良いのだけれど、そういう人はフジがいかに特有の魅力を持ったイベントかということを知らないまま帰って行くわけで、もったいない(流行語)なあと私は思う。その人たちにとっては別にフジでなくても良いのだから。
 私など誰が出演しようと7月の最後の週末は3日間苗場にいるつもりで日々を生きている。逆にフジと同じ面子が東京ドームあたりに出演するとなったとしても、絶対見に行くとは言えない。あの環境、ロケーションがあるからこそフジロックなのだ。その魅力は体験してみないことには分からないだろう。実際に開催されるまでは客である我々だって、当然地元の人だってそういうものになるとは分からなかったのだ。
 この3名のインタビューイの皆さんも最初は不安を感じながら、恐る恐る関わったみたいだ。私が毎年お世話になっている宿の管理人さんも、最初に苗場で開催した年は「恐怖のロックフェスティバルがやって来る」と思っていたみたいで、開催前に電話で問い合わせした時などもなるべく関わり合いたくないと思っているのが如実に分かるつっけんどんな応対だったのに、2年目からは実にフレンドリーになった。泥だらけの靴でロビーを闊歩したりしても、大目に見てくれたりする。普段は夜9時ぐらいで閉める大浴場を、フジの期間中は夜中まで開けていてくれたりもする。申し訳ないなあと毎年恐縮するのだけれど、ご好意に甘えさせてもらっている。
 観光協会の会長さん、旅館組合の組合長さん、湯沢町役場観光課の係長さん、それぞれの話は観客としては必ずしも知る必要の無いことかもしれない。でも裏方となる地元の人たちの熱意を知ったら、観客としてもフェスを成功させるべく協力しようという気持ちになる。ペットボトルをそこらに捨てたりはできないし、宿に帰る前にはなるべく靴の泥を落とすようにもするし。もう苗場でフジはできないなんて言われることが無いように、これからもずっと続けてほしいからね。