日本のロック名鑑vol.4@新宿Loft

24日は新宿タワーレコードでもインスト



 雑誌Indies issue企画のイベント。この面子なら満員札止めかと思いきや、到着してみたらフロアは結構余裕があった。動員は150人ぐらいか?このくらいの方が踊るスペースがあってありがたいのだが。客層は20代前半がほとんど。半分ほどは9月のRAW LIFEにも来ていたのではないかなという感じ。帽子着用率、男子のアゴ鬚率、共に高し。
◇TUCKER
 開演時間から30分ぐらい遅刻して到着したら、早くも彼らの出番は終わりかけであった。2MC(だったかな?)を据えたヒップホップとハードコアパンクのミクスチャー。異常に高いテンションにフロアは盛り上がっていたが、ものの5分と経たないうちに終わってしまったので評価のしようがない。またの機会に。
 
カセットコンロス
 3年ほど前だったか、彼らのデビューアルバムの曲がJ-WAVEでよくかかっていたので名前は認知していたが、ライヴは初めて。4本しか弦を張っていないギターを弾くヴォーカル、ベース、ドラム、ホーンが2名という編成。レゲエ、カリプソを消化しつつ、アグレッシブなファンクビートもさらりとこなす器用さがある。終始手元を見つめながら弾くベースなど、上手いなあと感心する瞬間が何度か。日本語詞は情緒的だが、曲調が明るいのでカラッとしている。bonobosほど緩くなく、アンサンブルを重視したライヴバンドの趣。
 MCでは客の反応が鈍いことを自虐気味のジョークにしながらも、何とか盛り上げようとする芸人根性を垣間見せた。しかし反応が鈍かったのはおそらく客に問題がある。この日ぐらいフロアに余裕があると、目当てのバンド以外は冷淡に接するのがマナーかのような誤解が蔓延する世界なのだ。ライヴハウスというのは。私の前にいた女子2人組みなんてカセットコンロスの演奏中に無関係の話で笑い転げていたし。そういう吝嗇家というか、知らない音楽に対して狭量な奴が少なからず紛れているのだ。これが超満員だったりすると、集団心理が働くので、よほどひどい演奏でもない限りちゃんと反応に現れるのだが。
 従ってカセットコンロスに非はない。注文を付けるとすれば、ライヴで受けることを狙った下心ある曲がもう少し多いとより良いと思う。
 
イルリメ
 今年のフジロック開催前には、思ひ出波止場と競演する「DJおじいさん」とはこの人では?と噂の立った人物(実際は違った)。さすがに知名度が高いので、スタート時にはステージ前に人垣ができる。
 ターンテーブルだけでなく、オルガンもベース(ただしこれは下手くそ)もプレイし、とにかく上げ上げで突っ走る。ヒップホップからテクノから、手当たり次第にぶちまける様は高尚なアバンギャルドと言うよりは、受けるためには手段を選ばない下世話さを感じた。オルガンではバッハやバカラックや、誰もが知っているフレーズを弾きまくって煽る、煽る。こういうものは頭を空っぽにして踊るのが正しい反応だ。最後には自動演奏に切り替え、イルリメ自らモッシュピットに飛び込んで暴れていた。参りました。30分ほどの短いセットながら汗だくになる。
 
YOUR SONG IS GOOD
 そしてトリはこの日最大のお目当て。この間のRAW LIFEでは見逃してしまったので、早いうちに見ておきたかった。ここ1ヶ月ほどの間に彼らを取り巻く状況は目まぐるしく変化している。今月初めに出た(フルアルバムとしては)ファーストアルバムは、タワーレコード渋谷店の邦楽アルバム売り上げ10/13付で6位!1週前に発売になったばかりのJUDEが7位、SHAKALABBITSが8位なのだから、いかに売れているかが分かる。まあ、今はまだ都内だけの局地的人気だとは思うが。
 ファーストアルバムがそうだったように、というかファーストはライヴでの彼らをパッケージした作品だったようで、以前のミニアルバムで聴けた緩いビートの癒し系ラテンバンドのイメージはすっかり払拭。この日も最初からアッパーなナンバーで疾走した。基本的にレゲエ、スカ、カリプソからノーザンソウルやファンクなどをごった煮にした路線ではあるものの、アンサンブルを聴かせるというよりは完全にパーティーのりのお祭り仕様。演奏が少々粗くてもお構い無しに、とにかく客を踊らせることに専念していた。この方向性が今の人気に結びついたのだろう。
 結成して7年と言うからメンバーはそこそこの歳だろうし、ルックス的にはお世辞にもアイドル視されるようなバンドではない。悪いけど。バカのりこそ生命線とばかりに、フロアをモッシュの渦にしてしまう演奏には、やはり今のバンドを取り巻く状況を反映した勢いがあった。曲目も「Walkin' Walkin'」とか「Up! Up!」とか、インストでありながらサビの部分は唱和できるように作られているものが多く、「踊らにゃソン、ソン」という気分にさせられる。フロアはこの日最大の盛り上がりを見せた。
 アンコールを入れても40分ほどで、短いセットだったが、満足。欲を言えばこれを青空の下で聴きたかった。来年のフジロックに期待しよう。