RALLYPAPA AND CARNEGIEMAMA@下北沢440



 大阪で結成されたバンドで、スワンプ・ロック、フォーク・ロック、さらにラグ・タイム、ファンク、ノーザン・ソウルまで包括する音楽性を持つ。いなたく、ハートウォーミングな音は既聴感があるとはいえ、後を引く魅力があり、過去に出した2枚のミニアルバムは1年ほど前から我が家でヘヴィーローテーション入りしていた。今月初のフルアルバムにしてライヴ盤を発売したのを受けてのツアーの一環として、東京での演奏を行った。実は私が彼らのライヴを見るのはこれが初めてだった。
 フロアの前半分は座席があり、一段高くなった後ろ半分はスタンディングという会場。動員は80人ぐらいだろうか。それでもあまり広くはないこの店はびっしり満員。残暑の影響もあって開演前から熱気が籠もっていた。
 ギター×2、ベース、キーボード、ドラムの5人組で、リードヴォーカルはギターのチョウ・ヒンレとキーボードのキム・スチョリが分け合う編成。CDで聴いていた時はあまり意識していなかったが、リードヴォーカルの担当者によって曲調に傾向があるようだ。チョウ・ヒンレが歌う方はファンキーでアッパーな曲、一方キム・スチョリが歌う方は叙情的で落ち着いた曲が多かった。作曲のクレジットはバンドになっているが、実質的にはこの2人が曲作りの主導権を握っているのかも。いずれの曲にしろバンドとしての一体感は相当なもので、アレンジはよく練られているし、それを表現する演奏力も充分に感じられた。アルバムと違ってアコースティックギターを使わない分、リードギターのキム・ガンホのレスポールが大活躍で、過不足なくツボを押さえたスライドが気持ちいい。
 メンバーそれぞれが高い技術を持ちながら、それをひけらかすことなく、アンサンブルを構成する一要素以上でも以下でもない音を出す。その完成度はスクエアと言うよりは冷徹とすら言ってもいい。一分の隙なく完成された音であり、実にグルーヴィ。
 こういう音楽をやっている以上はっぴいえんどシュガー・ベイブとの比較は避けて通れないし、大胆にもザ・バンドのカヴァーまでやっているほどだから確信犯でもあるのだが、数多くのフォロワーと違うのは演奏の確かさに加えて、彼らにオリジネイターと同様の探究心、実験精神が見えることである。はっぴいえんどにしてもバッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレイプを研究することで自分たちの音楽を確立していったのだから、後発のバンドが同じことをすること自体は何ら悪くはない。ただしあまたの真似ごとバンドは「○○風」で語られる範囲に安住することで満足してしまっている点で、音楽的なスリルを感じないし、将来性にも期待できない。ラリーパパが頭ひとつ、ふたつ抜けていると感じるのは、ルーツを大切にしつつもオリジナリティを模索し、格闘している様子が見えるからだ。かっちりした演奏の背景には極限まで煮詰めた様が感じられた。
 ライヴとしては非の打ち所が見つからない素晴らしいものであった。ただしこれが私の悪い癖でもあるのだが、期待を込めてあえて苦言を呈するならば、もっと自信たっぷりにふてぶてしく振舞ってもいいように思う。これだけの演奏力があるバンドなのに、MCではやたら低姿勢だし、不安げな印象は演奏そのものからも時々感じられた。それがプロらしくなく、鼻に付く瞬間があったのだ。デビューして3年ほどの若いバンドにそこまで求めるのは酷かもしれないが、その部分を完全に突き抜けた見本がNRBQなんだろうな。と、今書いていて気が付いた。NRBQはたまに客のことなんかお構いなしに自分たちで楽しんでる時があるからなあ。あのレベルまで到達できると最高、文句なしなのだが。