VAMP! zine issue3 Publishing Party@下北沢Shelter



◇テリー島村グループ
トリオ編成のサーフバンド。インストと歌モノが半々のオーソドックスなバンドだが、トラッシュな要素はほとんどなく、優雅で穏やかなロックンロール。テリー島村のギターはこれまたオーソドックスなスタイルながら、熟練されていて聴かせる。ドラムのウガンダが「こんなおっさん臭いことやってます!」と自嘲気味なMCをしていたように、確かにこれで今の10代は燃えないだろうし、タランティーノが気に入りそうな猥雑さや凶暴さも見当たらない。ただしこれはこれでひとつの形であって、私は楽しめた。

◇THE DAZES
平均年齢は20そこそこか、もしかしたらもっと下かも。若いというより幼い感じの女の子3人組。「これで何か甘いものでも買いなさい」とか言ってお小遣いをあげたくなったぞ。おじさんは。
音はガレージパンクとしか言いようのないシンプルなもので、ものすごく血圧が低そうな淡々とした演奏。ギターもベースもコードをストロークする以外ほとんど展開が無く、ドラムもおかずを混ぜずにリズムを刻んでいるだけ。それでも曲調はポップなので悪くは無いが、骨と皮だけのようなシンプル極まりないサウンドで、しかもまるで覇気の感じられない演奏では盛り上がらない。所謂青春パンクなんてのに比べればはるかにましだけど、このビートに賭ける情熱のほとばしりなんてものは無いのだろうか。しかしVAMP!に載っていたインタビューによると、既にアメリカでのライヴを経験済みなのだ。この子たち。時代は変わったな。私の感性が古いのかも。

◇JET BOYS
そこへいくとこのバンド、というかDAZESの父親であっても不思議でない年齢のオノチンは偉い。ちゃんと滅茶苦茶で、ちゃんとぶっ壊れてる。音に暴力衝動というものが感じられるのだ。セッティングが終わって演奏を始める前、景気付けのつもりか、やおらマイクを掴んだオノチンはメンバーに向かって「せめてこの20分だけは借金のことを忘れてがんばろうね!」と一喝。何でも1000万ほど借金を抱えてるそうな。ロックンローラーはこうでなくっちゃ。
年間1〜2回は見る機会があるのだが、見る度にメンバーが変わっているというレインボーも真っ青なバンドだ。しかし音の方は一貫して五月蝿く、激しく、手のつけられないガレージパンク。相も変わらずステッカーをベタベタ貼りまくったギターを振り回し、フルボリュームでノイズを撒き散らす。ピックの代わりに大根やヌンチャクを持ち出して弦にこすり付けたり、ラストはお約束のフルチンでのたうち回ったり。毎度お馴染みのJET BOYSのステージ。何が偉いって、これでオノチンは42歳なのだ。ジョン・レノンエルヴィス・プレスリーなら死んでる歳だ。あまりの尊さに手を合わせたくなった。保証人にはなりたくないけど。

◇THE BUCKETTERS
セドリックスのエノッキー、SUPERSNAZZのトモコらで結成されたカントリーバンド。カントリーロックではない、パッツィ・クラインやハンク・ウィリアムスの曲をカヴァーする生粋のカントリーバンドだ。それぞれのバンドとは別にサイドプロジェクトとして活動しているという話は聞いていたが、ライヴを見たのは初めて。衣装もウエスタン調でそろえて本格的である。MCによるとギター、ヴォーカルのタマちゃん(?)は今回から加入したそう。
セドリックスやスナッズの音楽性からは少々遠い位置に感じられるかもしれないが、トモコちゃんは(L.A.パンクの)XのファンでもあるのでKNITTERSを意識したであろうことは想像に難くないし、エノッキーのトワンギン・ギターはカントリーにも向いている。それより何より、カントリーはロックンロールの祖先であるから音楽的にも血縁関係にあるのだ。「Act Naturally」「Sweet Dreams」などロックファンにもお馴染みのスタンダードや、NRBQの「I Want You Bad」まで、伊達や酔狂でない演奏はお見事でした。タマちゃん(?)のシャックリ唱法がまた良かった。不勉強にして存じ上げないのだが、この方何者?

◇NYLON
そして堂々トリを飾ったのが京都発やさぐれガレージロッキン娘、NYLONである。先月同じShelterで見たばかりだが、今日の方がこころなしか客は多いような。演奏開始前、セッティングのため出てきているメンバーに向かってある客(男)が発した言葉。
シマノ、飛べ!今日はお前を見に来たんだ!」
気持ちはよく分かる。私もほぼ同じ理由で来ていたからだ。それを聞いてメンバーと顔を見合わせ苦笑いするシマノ(g)。既に貫禄すら感じられる。頼もしいぜ。
例によってセッティングが完了すると、そのまま演奏に突入。イントロと同時にフロント3人がハイジャンプ。キターーーーーー。体内の血液が逆流するこの瞬間がロックンロール。ゲシュタルト崩壊のような、何をどうしていいのか分からなくなるこの感覚を引き起こす音とパワーがこのバンドにはある。
先月初めて見た時の衝撃は衰えていなかったが、2回目ともなると多少は冷静にステージを見ることができた。シマノは非常にリズム感が良くて、右へ左へ駆け抜け、飛び跳ねながら、正確なカッティングをしていることに驚いた。シホ(b)、カッシー(ds)のリズム隊はオーソドックスに、というより冷徹にリズムをキープ。もう一方のフロントマンであるヴォーカルメグもやはり激しくステップを踏みながらも、終始絶叫。全員が職人気質を持っていることに気付いた。音的にはずっとパンク寄りだが、タイプとしては初期のドクターフィールグッドが近いだろうか。パブロックの匂いがするのだ。
今日はアンコールを含めても40分ほどの短いステージ。本当にあっという間に終わってしまった。時間を感じさせないという表現があるが、本当に一瞬だった。もちろん今日も全く息をつくことなく、4人は全力で疾走していた。もうね、堪らんですよ。正味の話が。今NYLONを見ないでどうすると言いたい。
8月下旬までのツアーをもって、ドラムのカッシーは脱退するらしい。残念だ。恐らく私が見るオリジナルメンバーでのNYLONのライヴはこれが最後だろう。後任はまだ決まっていないようで、加入する人によって大幅に音が変わることもないだろうとは思うが、今の緊張感を維持できるドラマーであって欲しい。