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何度も言う通り、私にとっては初のサマーソニックだった。ただし初日だけ、それも現地滞在時間は4時間でメインの千葉マリンスタジアムには立ち寄ってもいない。これだけでサマソニを語れるのかどうかは疑わしいが、しかしこれだけで語れてしまえそうな気もする。つまりそれだけ底の浅いイベントだったのだ。
1週間前にフジロックを終えたばかりなので、どうしてもフジと比較してしまうのはやむを得ないところ。その内容には雲泥の差を感じた。興行としてはともかく、少なくともフェスティバルとしては。今までサマソニを敬遠していた理由のひとつに「都市型フェスティバル」という胡散臭い名称がある。「ポップ・パンク」とか「ニュー・ウェイヴ・オブ・ニュー・ウェイヴ」みたいな、表面的に取り繕っただけのこじつけとしか思えないそのネーミングがまず信用できなかったのだ。確かに都市型ではあるのだろう。東京と大阪のそれぞれ近郊に住んでいる人なら宿泊の必要もなく、電車で行ける場所で開催されるイベントだ。だが、フェスティバルと呼べるほどの「ハレ」的要素はフジとは比べ物にならない。単に規模の大きいライヴイベントとしか思えなかった。
会場は容量の大きなハコ以上の意味合いは感じられず、苗場のようにそこにいるだけで生まれる安心感、開放感からは程遠い。実際到着して10分後には帰りたくなってしまった。観客は文字通り客体であって、フェスティバルを作り上げようという主体的意思は皆無。ただ観に来ているだけのお客さんでしかない。ライヴとライヴの狭間でも、苗場に来ている人は「暑いー」とか「疲れたー」とか言いながら笑顔だったりするのだが、幕張メッセにいた人は押しなべて目が死んでいる。目当てのアクトを観る以外に目的を持っていないし、他に楽しげなこともないから仕方がないのだろう。こういう人たちに囲まれても気分は高揚しないし、肝心のライヴが始まっても総じてノリが悪く、幻滅したりする。それを特に強く感じたのは実況でも少し触れたリー・ペリーの時。レゲエのライヴなんてコール＆レスポンスが基本かつ命なのに、無言の客の多いこと。爺さんが頑張ってたのになあ。あれは腹立たしかった。ダムドとかマンドゥ・ディアオの時は前の方がやたらと盛り上がっていたが、あの人たちは暴れるために来ているだけで演奏の良し悪しなど二の次三の次なのだから、論外。
フェスティバルにおいて主役は観客だというのは奇麗事でも何でもなくて、厳然たる事実だ。主役がお粗末なフェスが面白いはずがない。尤もこうした環境を生み出してしまった責任の多くは主催者にある。フェスの明確な理念を提示できないというか、提示するつもりはないようで、商業主義に走っているだけにしか見えないのだ。メッセの中央の休憩スペースで一番良い場所を占めていたのは全部企業の宣伝用ブース。各ステージの目立つ位置には無粋なスポンサーロゴがでかでかとディスプレイされていたのも興ざめ。そりゃあ目の前には消費行動力のあるユーザーがうじゃうじゃいるのだから、この機会を逃してなるものかと躍起になるのも分からなくはないが、フェスと展示会をごっちゃにされては逆効果ではないのか。
その分会場の整備や観客の利便性はないがしろにされていたように思う。例えば各ステージの移動のために使う通路の一部が喫煙スペースになっていたのは非喫煙者の私には不愉快だった。煙をかがないと目的のステージにたどり着けないのだ。会場内はただでさえ薄暗いのに、ゴミ箱のありかがまるで分からないのもどうかと思った。目をこらしてようやく発見できるような片隅にひっそりと設置されたゴミ箱は、係員が立っているわけでなく、照明も当っていないので表示されている分別方法を読むのも一苦労。そんなことだから、或いは金を払って来ているから何をしてもいいと思っている客が多いせいもあるのか、会場内、特にステージのある場所はおびただしい量のゴミが落ちていた。アルバイトの係員の教育もなっていないね。入口にはリストバンドと持ち物のチェックをすると表示がされていたのに、その横に立っていた係員はおしゃべりしていただけで職務放棄。あれならリストバンド無しでも会場に入れたのではないか。私はカメラは持ち込めるものだと思ってバッグに入れていたのだが、全くお咎め無し。チェックしてないのだから当たり前だ。ただし会場内では使わなかったけどね。
たった4時間いただけで、よくもまあこれだけぼやく材料が出てくるものだ。フェスティバルと名がつくからには、非日常的空間に身を置くことを期待して出かけたいのが私の感覚なのだが、サマソニはそれとはかけ離れていた。アーティストのライヴが観たいだけなら単独公演の方が楽しい。フェスの形態ならそれに何らかの付加価値がないと。サマソニの顧客満足度とかリピート率のデータってないのかなあ。恐らくとんでもなく低いことが想像できる。クリエイティヴマンには、幕張からそう遠くない場所にある某リゾート施設のつめの垢を分けてもらうことをお勧めする。