NYLONレコ発ライヴ@下北沢SHELTER



Great Mongoose
伝説のイベント「Back From The Grave」の時代から活動しているベテランバンド。調べたら今年で結成15年(!)にもなると知ってびっくり。そんなバンドながら実はライヴを見るのは初めてだったりする。これ以上ない程にオーソドックスなガレージ・バンドで、『Pebbles』などのコンピレーションに入っていても違和感なく聴けそうなサウンド。それが褒め言葉かというと、必ずしもそうではないのだが。可もなく不可もなくという感じ。途中何度かあったMCがロートル芸人の営業トークみたいな内容で、いちいちおっさん臭かったのは減点。
日本脳炎
こちらも初見。各メンバーはハード・コア系のバンドもやりながら、サイド・プロジェクトとして始めたらしい。その出自はともかく、音は最高。ギター2人に、ベース、ドラム、ヴォーカルの5人が一斉に叩き出すのは、洪水のように押し寄せる疑いようのないロックンロール。グラムロックにある過剰さと退廃感を併せ持ち、詞は全編日本語でキャッチーなフックを持つ曲多数。例えるならニューヨーク・ドールズ村八分の曲を演奏している感じとでも言えばいいか。「ロックンロールの過去を見た!その名は日本脳炎!」と声高に叫びたい。念のために言っておくが、褒めてます。
NYLON
そして今日最大のお目当て、NYLON。結論だけ最初に言っておくと、もう参った、恐れ入った、サイコー、サイコー、サイコー、サイコー。
こういうイベントだとセットチェンジの際にはバンド自らが出てきて準備するものだが、それは彼女達も同様。ただ違ったのはめいめいがセッティングをしている時からステージ上には不思議な緊張感が漂っており、セッティングが完了後は一旦引っ込むことなくそのまま演奏を始めたのである。セットチェンジの時からNYLONのステージは始まっていたのだ。1曲目の音が出た瞬間から背筋にゾクゾクっと冷たいものが走り、鳥肌が立ちっ放し。長年いろいろなライヴを見ているので、分析しながら観察するくせがついてしまっているのだが、それを超えた生理的な反応が起きた自分に自分が驚いてしまった。え、何これ?どーしよう、どーしよう…って感じ。2曲目の途中ぐらいまで口をあんぐり開けたまま、ただステージ上の動きを目で追うことしかできなかった。
ある程度予想していたとはいえ、実際はそれを上回る凄まじいテンションによる演奏。形容するなら狂気の塊。演奏していなければごく普通の、というかどちらかと言えばかなり地味な女の子たちにしか見えないのだが、スリムな黒いスーツを着込んでステージに立つことで人格が変わってしまうようだ。ヴォーカルとギターのフロント2人は、一瞬たりとも立ち止まるということがなく、ステップを踏み、飛び跳ね、右へ左へ走り回るパフォーマンスを続ける。アンコールを含めて1時間に及ぶ演奏は、この手のバンド、しかも2枚目のアルバムが出たばかりの新鋭にはかなりの長丁場であったはずだが、曲間に休むということが全く無く、給水すらせずに破竹の勢いのまま駆け抜けたのは驚異としか言いようがない。特にギターのシマノ、お前は本当に女か。ちゃんとマ○コは付いてんのか。いや、男とか女とかを超越して冷静に見たら宇宙人としか思えないぞ。
超人的な運動能力だけが凄いのではない。演奏だってちゃんとしていて、侮れないものがあった。こういうバンドを技術的にどうこう言うのは野暮というもので、決して正確ではないのだが、独自のグルーヴはしっかり息づいていた。あの動きからは信じ難いことに、ギターはウィルコ・ジョンソン直系、アベフトシ経由のカッティングを刻み続けたし、ヴォーカルは最初から最後まで絶叫していたのに、ちゃんと声が出ていた。ヴォーカルとギターのハイパーなペースに付いていけないのか、ベース、ドラムはずっともたり気味ではあったが、そのもたり具合が常にキープされているので逆にタイトに感じられた。
動員は100人弱といったところで、SHELTERとしてはやや寂しい入りではあった。ただ客の中にはガレージ系のバンドのメンバーの顔がちらほらあり、THE 88SのMABOなど最前列で嬉しそうに見ていたし、ドーベルマン01のヴォーカル(神戸から来てたのか?)の姿も。何より終演後の客が口々に「NYLONすげーよ、最高だよ」とこの体験を確認しあっていたことがライヴの素晴らしさの証明だ。個人史的に言ってもこのライヴは貴重かつ衝撃的であった。終演後も興奮が収まらないので、久しぶりに痛飲してしまい、ベロンベロンになって帰宅。正直に言うなら最後はどうやって帰ってきたのか覚えていない。