THE MICETEETH / Baby
Baby
スカパラを除けば、私にとって積極的に聴いてみようと思わせる日本のスカ、ルーツレゲエのバンドは今まであまり存在しなかったのだが、これは当たりを引いたと実感できた1枚。オーセンティックなスカの要素を前面に出しつつ、コピー、物真似を標榜しているのではなく、あくまで日本語で歌われるポップ・ソングとして成立している。スカ、レゲエに限らず本場の音に憧れを抱くのは音楽を始める上で最もシンプルな動機であるから、それ自体は良いのだが、憧れの対象に近づくことが目的化している音楽は聴いていて特に楽しいものではない。ジャマイカンでもないくせに、ドレッドヘアーでガンジャを吹かしてパトワ語でブラザー、シスターと挨拶するような輩は単に滑稽だ。
マイスティースの音楽からは、ホーンのアレンジや音の質感などに熱心なスカのリスナーとしての姿勢がはっきり見えるのだが、そこで終わっていないところに好感が持てる。日本の20代の若者の視点で捉えた日常的な言葉が、誤解を恐れずに言うとカラオケでも歌えそうなメロディーに乗っている。とかくマニアックなファンを生みやすいスカの形態を取りながら、スカなど知らない市井の人々に訴えかける親しみやすさがある。