David Bowie@日本武道館



恥ずかしながらこの歳になって生ボウイは初めてである。オリジナルアルバムだって半分ぐらいしか持っていないような生半可なファンの言うことだから、見当はずれな感想になるかもしれない。と予防線を張っておく私は狡すっからい。
今日は前座あり。グルーヴ(プ?)シンジケートという3人組みで、布袋寅泰のグループとの噂もあったがメンバーに布袋はおらず。真ん中でベースを弾いていたのは松井常松ではないか??威勢のいいソフト・バレエといった感じのインストを演奏するが私にはBGM以上の印象は無し。大半の客は「早くボウイを出せ」と思っていたことだろう。7時きっかりに登場し、7時20分きっかりに終了。あんた方は時計か。
7時50分ごろ、いよいよ客電が落ちる。ステージ後方の巨大スクリーンにアニメーションによるバンドが映し出され、オープニングのインスト曲が流れる。それに続いて実際のメンバーがステージに、最後に出てくるのがもちろん御大デヴィッド・ボウイ!!1階スタンドから見ても神々しいオーラが。おおー本物だ本物だ。57にもなるおっさんなのに相変わらずスマートで精悍なルックスは客の期待を裏切っていない。1曲目は「Rebel Rebel」。もちろん会場はいきなり大盛り上がりである。私だって無論聴きたかった曲なので聴けたことは単純に嬉しい。が、どこかで「いいのかね、こんな昔の曲から始めて」と思う自分もいる。だってボウイがかつての栄光にすがっているような姿は見たくないではないか。
しかしさすがにかつて東京ドームでやった懐メロオンパレードとは趣旨が異なるようで、近作のナンバーもちゃんと披露されたので一応溜飲は下がった。構成は70年代の曲が半分、90年代半ば以降が半分といった感じ。80年代及びティン・マシーン時代の曲はほとんど取り上げられていないようだ。そのバランスはともかく、今ひとつ圧倒されるような感動に結びつかないくすぶった印象は終始拭えなかった。何故ならステージのコンセプトが明確に伝わってこないからだ。新旧の曲、或いはハードな曲、ソフトな曲が脈略無く入り混じる流れなので、新作を中心とした現役感をアピールした内容なのか、往年のヒット曲をサービスするための内容なのか、どっちつかずのもどかしさが残るのだ。例えばアップ・テンポの曲とスローな曲を分けて緩急を付けるとか、構成がもう少し整理されていれば印象もずい分と変わったものになったように思う。
加えて、ボウイのライヴなら凝ったセットや衣装、演劇的要素など各種演出も楽しみのひとつであるはずだが、その期待に応えてくれなかったのも惜しまれる。巨大スクリーンが効果的に使われたのはほとんどオープニングだけと言って良い。それ以外は全く使われない曲も多かったし、使われた曲でも単純にメンバーを映し出しているか幾何学模様のような背景を流している程度であったのが大半で、必要最小限にも届かない役割しか果たしていなかった。ステージ上には両脇と後方に2メートル程度の高さの花道が設置されていたが、これを使ったのもわずかに2曲のみ。それも単に両脇をボウイが歩いたに過ぎず、花道がある必然性は不明。またボウイの衣装はオープニングで着ていたジャケットを脱いだ以外はアンコールまで含めてお色直しは一度も無し。
バンドメンバーはいずれも腕利き揃いで、アール・スリックのギターなどミック・ロンソンのそれを髣髴とさせるものすら感じられ、演奏は確かなものだった。ボウイの声も全く衰えを感じさせず、最後までよく出ていたのはさすがだと思う。演出と呼べるものは極力排除してシンプルに演奏だけを聴かせようという意図があったのだろうか。それにしては武道館というサイズは少々大きすぎるということぐらい、ベテランのボウイが気づかなかったはずはないのだが。
辛らつな感想ばかり並べてしまったが、演奏自体はレベルの高いものであったのは間違いなく、ややテンポを落としたアレンジが多かったとはいえ70年代の名曲の数々が聴けたことはファンとして嬉しくないはずがない。「Quicksand」には涙しそうになったし、アンコールでのジギー・ナンバー3曲は無条件にエキサイトしてしまった。それでも全体的に言えばボウイらしいサプライズは見出せず、散漫な印象が残ったのも事実であって、私はこのライヴに満点を差し上げることはできない。

UDOのサイトにセットリストが載っていたので転載。ついでだから私は見ていない8日の分も。前座が付いたのに曲数は9日の方が多かったのね。
3月8日(月)日本武道館  
 01.Rebel Rebel
 02.New Killer Star
 03.Fame
 04.Cactus
 05.China Girl
 06.All The Young Dudes
 07.Never Get Old
 08.The Loneliest Guy
 09.The Man Who Sold The World
 10.Hallo Spaceboy
 11.Sunday
 12.Heathen (The Rays)
 13.Under Pressure
 14.Life On Mars?
 15.Looking For Water
 16.Quicksand
 17.Days
 18.Sound And Vision
 19.Be My Wife
 20.A New Career In A New Town
 21.Ashes To Ashes
 22.I'm Afraid of Americans
 23."Heroes"
◇◇◇ ENCORE ◇◇◇
 24.Five Years
 25.Suffragette City
 26.Ziggy Stardust


3月9日(火)日本武道館
 01.Rebel Rebel
 02.Hang On To Yourself
 03.New Killer Star
 04.Fashion
 05.Cactus
 06.All The Young Dudes
 07.China Girl
 08.Reality
 09.5:15 The Angels Have Gone
 10.The Man Who Sold The World
 11.Hallo Spaceboy
 12.Sunday
 13.Heathen (The Rays)
 14.Under Pressure
 15.Slip Away
 16.Looking For Water
 17.Quicksand
 18.The Loneliest Guy
 19.Afraid
 20.Be My Wife
 21.A New Career In A New Town
 22.Ashes To Ashes
 23.I'm Afraid of Americans
 24."Heroes"
◇◇◇ ENCORE ◇◇◇
 25.Bring Me The Disco King
 26.Five Years
 27.Fall Dog Bombs The Moon
 28.Suffragette City
 29.Ziggy Stardust