Sweet Love Shower@日比谷野音



忌野清志郎

午後3時の開演と同時にいきなり登場したので驚いた。てっきりトリだと思ってたのに。開演時間に来ていて良かったー。今年はフジロックへの出演が無かったし、8月の野音ソロ公演はチケットが取れなかったので、久々に見る清志郎だ。このところ続けていたいくつかのプロジェクトユニットを一段落させたみたいで、ソロ名義に戻って何をやるのかと思ったらRCと同じ編成で「雨上がりの夜空に」でスタート。ギターが三宅伸治、キーボードにスーパーバタードッグのイケダタカフミ(字がわかりません)、片山広明率いるブルーデイホーンズも従えて、清志郎はハンドマイクでステージ上を右へ左へ。さすがに50を越えて多少肉付きも良くなったし、転げ回ってシャウトなんてこともしないのだけど、声は出てるし何よりファンとしては子供だったとしても不思議でない年齢のバンドたちと同じステージに上がって、今も現役感バリバリなのが嬉しい。新曲を交えつつ「サントワ・マ・ミー」「キモチE」まで聴けたので文句などあるわけない。12月のツアーも行くぜ。



Lost In Time
見るのも聴くのも初めて。ギター中心の3ピースで透明感と哀感のあるヴォーカルが印象に残った。ただ所謂J−POPの枠内にしか感じられず。あと演奏力に未熟さも。


PE'Z
どうしてもスカパラの後追いのイメージが抜けきらず、個人的には興味を掻き立てられない。やってることはスカではないけどね。ジャズ形式でありながらメロディーなどキャッチーで明解だから受けがいいのは分かるものの、スカパラには感じられるいかがわしいグルーヴが見当たらないのが致命的。真面目過ぎるのもどうかと。最後の曲でケミストリーが出てきて会場は盛り上がった。


レミオロメン
これも所謂J−POPバンドで括られる、危なげなく、物分かりの良さそうな若者。曲作りは上手いと思ったし、初期のスピッツを思わせる部分もあったので近いうちに茶の間レベルでブレイクするんじゃないの?


UA
2週間ほど前に同じ野音で行われたワンマンは都合で見れなかったので楽しみにしていた。ベスト盤が出たばかりだし、久しぶりに昔のヒット曲も歌ってくれるのではないかと。豈図らんや、実にしっぶ〜い選曲。「波動」「サマーメランコリック」「ドア」「閃光」「世界」だもん。シングル曲は「閃光」だけで、それもあんまり売れなかった曲だからなあ。テレビの中継も入っているのにこの人はベスト盤のプロモーションなんて気にしないの?バンドはドラムのASA-CHANが交代している以外は去年のツアーから固定された顔ぶれで、アコースティック中心のミニマル・ビートのアレンジもここのところのライヴと同じ。UAの喉の調子は京都の満月祭りやフジロックの時よりは良さそうで、浮ついた野音の空気をガラっと変えてしまったのはさすが。でも逆に言えばこの緊張感溢れる演奏は場違いでもあった。いや、私は熱烈なファンですからUAが出てきて歌えば何だって有り難がる自信はあるのですけど。前述のワンマンは「情熱」から始まったと聞いていたので、見逃したことがますます悔やまれる。11月のアロハ・フェスに期待しよう。


HY
今をときめくHYであって、売れてるバンドというだけで少なからず興味はあったのだが、まー、これほどまでに相容れないものとは思わなかった。これを認めることは20年間ロックを中心とした音楽を聴いてきた私の沽券に関わる。何と形容したら良いのだろう。その辺の兄ちゃんが鼻くそほじりながら30分で書いたみたいな手垢まみれの歌詞やメロディーに、辟易するのを通り越して開いた口が塞がらない。だいたい何故ステージ上に全長3メートルぐらいの巨大なニガウリのオブジェが置いてあるの?それが沖縄出身であることのアイデンティティの現れなのか?それじゃあスーパーカーはリンゴを、ナンバーガールは辛し明太子を置かなければならないのか。ギターウルフコーネリアスは海外でライヴをやる時スモウレスラーやゲイシャガールを登場させたか?この時点で価値観に想像を絶する距離を感じるのだ。それに「大きな声出していきましょー」ってMCは何?下手なAV監督みたいなこと言ってんじゃないよ。ライヴの内容が私にはツンドラ級に寒いものだったのに、会場が結構盛り上がっていたのは驚いた。どうして皆さん嬉しそうに拳を振ってるの?その異様な光景に「ナチスの集会に紛れ込んだユダヤ人の心境」と言ったら、同行のM女史も激しく同意してくれたので3曲目の途中で会場を脱出。あー、怖かった。こんなバンドが100万単位でCDを売るご時世とは、第二種兼業とはいえ音楽ライターの端くれとして危機感を覚える。しかし、ついこの間ルー・リードに感激した自分に嘘はつけないもんなあ。




まだ時間も早かったので有楽町にあるN姉さんの実家の居酒屋へ。M女史とHYの悪口を言いながらぐだぐた飲み、途中から隣のテーブルにいた音響、照明を生業とする女性2名(面白い)と合流し、業界裏話や業界トホホ話を肴に深酒。嗚呼。