梅津和時プチ大仕事2007/ニッポンの歌宝@新宿PIT INN



  出演者が日替わりである梅津さんの大仕事シリーズは、一度見たいと思っていたもので、念願が叶った。かつては20日ぐらい連続で行なわれたこともあったが、今年は全6回の「プチ大仕事」と銘打たれており、この日はその最終日。出演は梅津和時(sax,cl)、木村充揮(vo,g)、渋谷毅(pf)。
 この面子なので当然のように立ち見までびっしり埋まる超満員。整理番号順入場の自由席で、開場時間から5分ほど遅れて到着したら、私の整理番号よりずっと後の人が入場していた。危うく座れないところだった。トイレに行くにも難儀するギュウギュウ詰めの会場で、ほとんどの観客は開演までの30分ほどを待っていたのである。皆律儀だね。
 開演時間を過ぎ、梅津さんがステージに現れて挨拶。それによると何をやるか全く決まっていないとのこと。予めコード譜は渡されていたものの、リハで合わせたのはそれ以外の曲ばかりとのこと。どうなるか分からないけど、何とかなるでしょうと言われても、この人たちなら大丈夫だろうと、こちらも何ら不安を感じないが(笑)。
 渋谷毅木村充揮がステージに呼ばれ、いよいよスタート。この組み合わせで見るのは初めてだし、それぞれに思い入れのあるミュージシャンではあるのに、まるで緊張感が感じられないのはある意味凄い。履き古したパンツのゴムのようにゆるゆるの空気の中、「GEORGIA ON MY MIND」が始まる。
 ささやくように、つぶやくように、全く力まない歌い方によって、余りにも有名なこの曲を木村は自分の持ち歌に変えてしまう。梅津、渋谷の両名はその世界を瞬時に察知して必要充分な彩りを加える。これぞ芸。
 「KIND HEARTED WOMAN」など、前半はブルースを中心に。途中からは新旧のナンバーを取り混ぜて、終始まったりとステージは進行した。「胸が痛い」は今聴いても良い曲だなあと感慨もひとしお。「おそうじオバチャン」「嫌んなった」など憂歌団時代の代表曲も聴けた。真島昌利の「ハッピーソング」が歌われたのには驚いたが、帰宅してから調べてみたら、ライヴでは結構演奏されているのね。テンポを落として、あのだみ声で気持ち良さげに歌われると、元々この人のために作られた曲ではないかと錯覚してしまうから不思議。凡人ならば深刻に歌うようなテーマも、木村の天真爛漫さの前では「ま、いいか」と大したことではないように思えてくる。
 途中20分ほどの休憩を挟んでの2部構成で、8時過ぎにスタートし、全てが終わったのが11時近く。第2部の最初に梅津さんと渋谷さんのデュオでの演奏が1曲行われたものの、基本的には木村充揮がリードする形で、梅津、渋谷はバッキングを担当した。サブタイトルに「ニッポンの歌宝」とあったので、予想できたことではあったが、もう少し梅津、渋谷両名にスポットを当てる内容でも良かったかとは思う。火花を散らすようなバトルも少しはあるのかなと期待していたので。ただ、歌手のバッキングに於いては抜群のセンスを持つ二人なので、演奏は瑕疵の無いものであったのは事実。実際木村も非常にやりやすそうにしていたし。この辺は梅津、渋谷の人柄も反映していたのかも。
 客層は30代から50代が中心。39歳の私でも、決して高齢とは言えないライヴは久しぶりだった。たまにはこういう機会があってもいい。