The Who / 30 Years of Maximum R&B Live

94年に発売されたザ・フーデビュー30周年企画の映像版。ドイツでDVD化されていたので入手。確かかなり以前にアメリカでもDVD化されているはずだが、既に廃盤。日本盤が出る気配が無いので仕方なくこちらを購入。ただしPAL方式になっており、対応プレイヤーを持っていないと見られないのでご注意。
ザ・フーの歴代のライヴ映像をかき集めた約2時間半。ライヴでのクレイジーなパフォーマンスが売りでもあった彼らだけに、ファンとしては見ておかねばならない作品には違いないが、映像作品としては『The Kids Are Alright』という至高の1本があるため、比較してしまうとどうにも分は悪い。映像自体は貴重なものばかりで、例えばキースがステージ上で昏睡状態に陥ったため、ピートが「この中にドラムが叩ける奴はいないか?」と呼び掛け客席から代役を引っ張りあげるシーンまである。その他伝説の瞬間は多数収録されているのだが、ライヴ映像として美味しいところは『The Kids Are Alright』に使われてしまった後で、残り物の感は拭えない。選曲もよく言えばファン向け、悪く言えば地味な印象で、「無法の世界」「ババ・オライリィ」といった代表曲すら入っていないのは痛い。この2曲に関しては『The Kids Are Alright』収録の78年シェパートンの映像に止めを刺すのであえて外したということも理解できるのだが。
後半1時間ほどがキース亡き後の映像というのも、分かっちゃいるけど辛いのよ。プロだから演奏そのものはそれなりにこなしていても、キース在籍時のマジックは霧散してしまっているのが映像からも見て取れる。
やはりこれはザ・フーの歴史を確認するための資料としての作品なのだ。鑑賞に耐えうるのは『The Kids Are Alright』であることは疑いようもない。これを見ていると『The Kids Are Alright』の迫力やテンポが恋しくなり、実際『The Kids Are Alright』のビデオを見直してしまった。
付け加えておくと、『30 Years of Maximum R&B Live』DVDは映像こそクリアーになっているものの、音声はVHSと大差なく、5.1CH仕様でもDTS仕様でもない。それも減点対象。