GO!GO!7188@調布グリーンホール



わしもいろんなバンドを見てるな…。
最初に言い訳のコーナー。はっきり言って、私はこのバンドのことをよく知りません。前に一度テレビで見たことがあり、その時演奏していたのがタイガースの「君だけに愛を」のカヴァーだった。それがすこぶる上手かったので興味を持ったのが最初の出会いである。それが切っ掛けでカヴァーばかりを集めた『虎の穴』というアルバムを聴いてみたところ、「バンバンバン」をウィルコ・ジョンソンのアレンジでやっていたり、「心の旅」をラモーンズのアレンジでやっていたり、諧謔の精神を持ったバンドであることを知り好印象は持っていた。しかし、肝心のオリジナル曲を聴いたことがないのだ。にも拘らず、地元でライヴをやるというのでついチケットを買ってしまった。しかも地の利を生かして手に入れたのは最前列だ。買ってからしまったと思ったが時既に遅し。最前列なら最前列なりの観客としてのマナーというものがある。全く無名のバンドならいざ知らず、オリコンでもトップ10に入る人気バンドをほとんど何の知識も無いまま一番前で見るというのは、なかなか緊張するものだ。
事前に予習しておこうなどと殊勝な考えは持たない人間なので、相変わらずカヴァーアルバム(それも発売は一昨年…)以外は何の知識も無いまま迎えた当日、おっそろしく退屈だったらどうしようとか、売れてるJ-POPにありがちな内輪受けに終始する内容だったらどうしようといった不安はあった。最前列では逃げ場が無いし。しかし結論から言えばそれらは全く杞憂であって、全曲初めて聴く曲ばかりだったとはいえ、充分楽しめるライヴだった。
ギターとベースの女の子二人にむさくるしいドラムの3ピース。って大抵皆知ってるわな。フロントの二人はまだ20代前半とのことで、若いと言うより一見まだ子供。ドラムはもっとおっさんだと思っていたが、実物は結構若かった。でも30ぐらいか?いずれにしてもこのバンドの平均年齢は私より10歳ぐらい下なのではないか。そんな彼らの演奏が、舌を巻くほど上手いのだから恐れ入る。ギターの子(ゆうちゃん?)なんて歌いながら眉ひとつ動かさずにシャッフルのリフをきっちり決めたり…。ただし欧米のロックを中心に20年以上聴いてきた者として言わせてもらえばあくまで指が早く動くという点での「技術的な」上手さであって、欧米のミュージシャンに多いセンスや味わいで勝負できる上手さとは違う種類のものだ。若い分仕方が無いとはいえ、その辺に底の浅さが見えたりもした。ただしドラムだけは曲者で、四つ打ちの縦に割れる感じなど初期パンクから60年代ビートバンドまで遡れるバックグラウンドが垣間見れる演奏であった。これはやはり年の功か。
手先の器用な日本人の長所を生かしたロックとでも言ったらいいのだろうか、それは悪く言えばちんまりまとまっているということでもあるのだが、それをデメリットとはせずに逆に生かす方向でオリジナリティを追求しているのがGO!GO!7188だと思った。カヴァーアルバムで古の洋楽ロックネタを持ち込んでいた割には、ギター、ベースの二人の音からは洋楽ロックの影響はあまり見られず、ネタ元がドラムであることも伺わせた。ロックおたくに近いドラムと天然のギター、ベースというバランスが彼らのサウンドを形成する鍵なのだろう。ストレートなパンク・ビート調のリズムが中心だが、曲によっては変拍子が炸裂するプログレ調の組曲もあったり、リズムに関しては箱庭的なごったがえり感が単純なビート・バンドと一線を画す要因になっている。またその加工の上手さに日本人的なスタンスが見えたりもした。さらに忘れてならないのがロックらしからぬメロディーの奇抜さで、散々言われているのだろうが、こぶしの回る歌い方に象徴されるようにほとんど演歌調と言っていい。しかしそれらが奇をてらったり無理した結果ではなく、ごく自然に彼らのオリジナリティとして作られていたのは目からうろこの衝撃だった。こうした融合のさせ方というのはありそうでなかったのは確かで、日本人に親しみやすいロックの一形態の発明だろう。
ここまで書いて感想が完全におっさん視線からのものになっていることに気づいたが、今更若ぶるつもりも無いので思った通りに書く。
こういうバンドが登場して、それなりの人気も獲得しているということは、やはり日本のロックが成熟期に入ったのだなあと思った。30云年前「日本語ロック論争」なるものが巻き起こり、「ロックに日本語は乗らない」などと言われたのはどこの国の話なのだろう。今やこうしてちゃんと日本語を乗せて、サウンドはしっかりロックというバンドが現に存在する。誤解を恐れず言うが、オリジネイターとしてのはっぴいえんど頭脳警察の過去の業績を持ち上げることにやっきで、常に発見される対象であることに価値を見ている人たちは、GO!GO!7188というバンドがただのJ-POPとして普通の高校生、大学生に支持されている現実を考えた方がいい。